あの人は今?と思うことはあまりないです。
誰がどうなってようと、というと薄情なようですが、まあ気にならない。
たまに思うのは、ヤマハでエレキギターを習ってた時に知り合った若者二人です。
二人とももう50歳くらいになってると思います。
A君は、私がエレキギターを習いはじめてすぐに同じクラスに入ってきた。
教室に入ってきた彼を見て、暗くてぼんやりした男だなと思いました。
第一印象はかなり当たってた。
初日、レッスンがすんで教室を出た私についてきた。
話をしながら近鉄奈良駅について、改札を入ろうとしたら彼が、「ボク、JRなんです」と言ったのでびっくりした。
完全に逆方向なのに私についてきたのに驚きました。
改札を入ろうとする私の腕をつかまえて、「そこのベンチでちょっと話しましょう!たばこ一本吸う間!」と言ったのでまたびっくりしました。
22、3歳の若者が、46、7歳のおじさんの腕をつかまえるって・・・。
しかたなく改札横のベンチでおしゃべりして、彼のタバコが済んだので、「じゃ」と立ち上がる私の腕をつかまえて、「もう一本!もう一本だけ!」と彼がせがんだときは、しみじみしてしまった。
それから毎週、レッスンが終わると近鉄奈良駅の改札横のベンチで、彼がタバコ二本吸うあいだおしゃべりしてました。
暗くぼんやりした彼が、エレキギターを持つと、「地獄の狂獣」に変身するんです。
無茶苦茶な大音量で狂ったように弾きまくる、というか、完全に狂って弾きまくる。
そのだいぶ後で知り合ったのが、ボーカル科のB君で、彼も暗くぼんやりしてるんですが、マイクを持つと「地獄の狂獣」に変身するんです。
狂ったように叫ぶ、というか完全に狂って叫びまくる。
いつのまにか、どういうわけか、私に近づいてきて、彼のボーカルには私のギターという組み合わせになってしまった。
ヤマハの先生に、「若草さんは、A君やB君みたいな子を吸い寄せますね」と言われた。
私はブラックホールか。
50歳になったA君やB君を見たいような見たくないような。