エル・グレコは、「受胎告知」などで有名な画家である。
出先からの帰り、近鉄電車の窓から、いつものように外をぼんやり眺めていると、建物の壁に、デカデカと「エル・グレコ」と書いてあるのに気づいた。
いつも乗っているけど、いつもぼんやりしてるから気づかなかった。
奈良、というより、大和路と言う方が似合うあたりに建つ、アパートというか、二階建て、10戸ほどの、わりと新しい集合住宅である。
その壁に、「エル・グレコ」と書いてあるのだ。
なんじゃ、これは。
この集合住宅の名前なんでしょうな。
大家さんが、グレコのファンなのか。
婦人服のブランドみたいである。
「若草アパート」とか「若草荘」あたりが無難だと思う。
少なくとも、私が悩まなくて済む。
電車を下りて改札に向かう。
幼稚園くらいの可愛い男の子と、おじいちゃんもいっしょ。
おじいちゃんは、大きな紙袋を下げている。
おもちゃを買ってもらったんでしょう。
男の子は、可愛い声でなにかしゃべってるが、おじいちゃんは、バス停を気にして、改札口に向かって急ぎ足だ。
私も、バスが気になるので急ぎ足だ。
お、ちょうど住宅行きのバスが止まってる。
よっしゃ!
グッドタイミング!と私が思ったのと同時に、おじいちゃんが駆け出した。
「○君!バス来てる!」
おじいちゃんは大声で叫んだ。
男の子は、おじいちゃんを追いかけながら、可愛い声で、「おじいちゃん!おそい!もうおそい!」と言った。
おじいちゃんは、「いけるいける!○君、いける!」と言って走った。
男の子は、「おそい・・もうおそい」と言いながら追いかけた。
どっちが年寄りかわからんなあ、と思いながら私も走りました。
走らなくてもだいじょうぶでありました。