父は「子煩悩」でした。
私が小学生のころ、母が自分の妹の夫のことを「あの人は子煩悩やから」と言ったことがありました。
私が「子煩悩とはどういうことか」と聞いたら「子供をかわいがる人のこと」と答えました。
その時私は、「おとうちゃんは子煩悩なんや!」と霧が晴れたような気がしたのをおぼえてます。
父が幼い妹を懐に入れるようにして酒を飲んでる写真があります。
私も長女や次女をひざに置いて飲みました。
似るもんです。
父は孫ができると「孫煩悩」になりました。
当時、私の両親は我が家から自転車で5分くらいのところに住んでました。
父は、ゆうちゃん、あきらくんのママが生まれると、毎日のようにやってきて飽きずに見ていたようです。
家内が「おとうさん、じ~っと見てはるわ」と笑ってました。
近所の公園で砂遊びする様子を見守っている写真もあります。
それから数年後、両親は我が家の隣に家を建てました。
父はウチに来るとき、いつも「こんにちは!」とヘンな抑揚をつけて入ってきました。
きのう、ゆうちゃん、あきらくん宅に、しょうちゃん、みいちゃんが来てクリスマス会だというので家内と二人で行きました。
徒歩2分ですが、私たちは現在歩行困難なので車で行きました。
ドアを開けて入るとあきらくんが立ってました。
私を見てニコッと笑うと、ヘンな抑揚をつけて「こんにちは!」と言いました。
一瞬混乱しました。
父の「こんにちは!」だったんです。
あきらくんは父を知りません。
そのあきらくんが父の口真似をしている!
あきらくんは笑いながら「おじいちゃん、いつもこう言うやろ!」と言いました。
ますます混乱しました。
父を知らないあきらくんが、なぜ?
つぎの瞬間理解しました。
あきらくんは父の口真似をしたのじゃない。
私が知らず知らずのうちに父を真似てヘンな抑揚をつけて「こんにちは!」と言うようになってて、その私の口真似をあきらくんがしたんですね。
三代にわたる壮大な口真似の軌跡が解き明かされたのである!