少女小説『ジェインおばさんの姪たちの夏休み』が読みやすかったし、アメリカンな感じが面白かったのでもう一冊くらいタダなら読もうかと思ってアマゾンUSAで調べたらありました。
女性参政権のない時代にハイティーンの女の子が「選挙戦」と言うのがとりあえずアメリカンな感じです。
この『ジェインおばさんの姪たちシリーズ』は1906年にはじまった人気シリーズです。
1900年『オズの魔法使い』で大ヒットを飛ばしたライマン・フランク・ボームにある出版社が新しい小説を依頼したんです。
「オルコット女史の『若草物語』みたいなのを書いてください」という依頼でした。
出版社が言いたかったのは、『若草物語』みたいな内容の本というのじゃなくて、『若草物語』みたいに女の子に受ける本ということだった。
で、作者が考えたのが、「億万長者のおばさんの三人の姪たち」と言う設定だった。
男の子向けなら「がんばって億万長者になる話」だったと思います。
1906年から1915年まで毎年一冊出たんですから大人気シリーズだった。
1920年ごろから急速に忘れられていったみたいです。
さて、この「選挙戦」ですが、三人の姪たちと仲良しの21歳の青年が上院議員に立候補するんです。
この若者がまた億万長者の甥なんです。
作者は、「女の子たちは億万長者に弱い!」と思ってたんですね。
この若者が立候補を決意するきっかけが今風ですよ。
ある日馬に乗って美しい田園風景を楽しんでたら、巨大な岩に赤いペンキで石鹸の広告が書いてあった。
何たることかと怒ってたら白いペンキで「ファイト一発オロナミンC!」みたいな広告を見つけた。
あちこち広告だらけである。
「けしからん!自然の美しさは神様が人間に与えた贈り物だ!それを広告で汚すのは神に対する冒とくである!これは法律で禁止するほかない!」
と言うわけでケネス青年は上院議員に立候補するんです。
日本で言えば明治時代に「景観保護」に燃えてるのもアメリカンだと思いました。
若い奴が何言ってるんだ、やっぱり現職のホプキンズさんだ。
ケネス青年圧倒的不利!
そこで立ち上がったのが三人の姪と億万長者のおじさんで、四人でニューヨークから選挙区に乗り込む。
まずおじさんが銀行に行って支配人に誰を支持してるのか聞く。
「もちろん現職のホプキンズさんです」
「ほほ~、私は甥のケネス氏を支持してます。選挙戦では金に糸目はつけないつもりです。とりあえず5千ドル預金しましょう。まだまだ使いまっせ!ところであなたは誰を支持してたんでしたかね?」と小切手をひらひらさせる。
「も、もちろんケネスさんです」
つぎにおじさんは新聞社に行って発行者にこの新聞は誰を支持してるか聞く。
「もちろん現職のホプキンスさんですよ」
「ホプキンズさんは立候補の広告にいくら使うんですか」
「50ドルも使っていただくんですよ」
「私はケネスを応援してるんですが、200ドル出しましょう。当選したらもう500ドル。どっちを支持しますか?」
「もちろんケネスさんです」
姪たちも近所の店に行っては品物を買いまくってお店の人をケネス支持に変えていくんです。
「こちらのお店では誰を支持してるんですか」
「もちろん現職のホプキンズさんですよ」
「葉巻をくださいな」
「何本ですか?」
「箱ごとください。店に来る人に葉巻を配ってケネスさんに投票するよう説得してほしいんです。じゃんじゃん配ってください。足らなくなったらいくらでも買いますから」
「わかりました!ケネスさんに一票でございますね!」
これって選挙戦と言うより買収戦ですよ。
少女向け小説でこんなこと書いていいんですか。
あきれたもんですが、これがアメリカン?