若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ディアドラ・マスク著『住所録』

最近よくあるパターンなんですが、なぜこの本を注文したのかわかりません。

どこで知ったとか、どこに興味を持ったとか忘れてしまってます。

 

住所とは何か。

そんなもん決まってるがな、寿町三丁目一番地で手紙が届く。

それが素人の浅はかさ、著者は、住所であなたの人種とか懐具合がわかるというんです。

 

巨大都市ニューヨークの市議会はいろいろな案件を審議する。

その40%が「住居表示の変更」だそうです。

ニューヨークではカネを払って自分の好きな地名をつけられるようです。

人物の名前が多い。

歴史上の人物だけじゃなくて、今売れてる歌手とか俳優の名前もついてます。

前にも書きましたが、俳優の名前をつけて一番自然なのは、オードリー・ヘップバーンを記念してつけた「ヘップバーン大通り」でしょう。

 

「世界中の家に住居表示番号を!」という運動をしてる人たちがある。

住居表示番号がない家なんてあるのか。

スラム街とか難民キャンプとか、アメリカでも大草原の小さな家だとないみたいです。

 

誰がそんな運動をしてるのか。

まず、万国郵便連合

これはわかります。住居表示が命です。

次に世界銀行となるとちょっとわかりにくい。

それからアイルランドの非営利組織「住居表示のない家に住居表示をつける会」というのがあって、わざわざインドのカルカッタまで行ってスラム街に住居番号をつけて回ってるとなると、なんのことかほんとにわかりにくい。

 

住居表示は基本的人権である、と言われてもわかりにくい。

就学通知が届く、予防接種のお知らせが届く、年金の振り込み通知とか、もちろん税金の督促状も届く。

住居表示があるということは、「あなたはこの社会の一員なんです」という表明であり「私はこの社会の一員である」という自覚を促すものである、と言われるとなんとなくわかったような気になります。

 

読み始めたとこなんですが、ネットに『ニューヨークタイムズ』の書評が出てました。

トランプさんが出てきます。

1997年、トランプさんがニューヨーク市内のビルについて「私の52階建てのビル」とうそをついてると言うんです。

トランプさんが古いビルを改装して売り出しただけで、所有者はトランプさんじゃなくてゼネラルエレクトリックス年金基金で、52階建てじゃなくて44階建てだそうです。

古いビルの時は52階だったけど改装して44階になったのにトランプさんは52階建てと言い続けた。

それ以来ニューヨークの不動産業者は、60階建てのビルを改装して55階建てになっても60階建てという慣習ができてしまったそうです。

トランプさんはそのビルの住居表示「コロンバスサークル15番地」が気に入らなかった。

ぱっとしない地名だったんでしょうね。

こういう話はニューヨーク市民でないとわからない。

で、かっこいい「セントラルパーク西1番地」という地名に変更したんです。

セントラルパークの西にあって一応公園を見下ろせるビルだった。

ところがトランプさんの上を行く男が現われた。

トランプさんのビルの裏にビルを建てて「セントラルパーク1番地」という住居表示にしたんです。

セントラルパークは見えないのに。

トランプさんは真っ赤になって怒り狂った。

怒り狂ってそのビルに向けて巨大横断幕を掲げた。

「そこからセントラルパークが見えるのか!こっちは見えるぞ!」

さすがトランプ嫌いの『ニューヨークタイムズ』もこの時ばかりは「トランプの勝ち」と書いたそうです。

 

住居表示には社会的、思想的、欲望ギラギラ的深い意味があるという本みたいです。