若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ウイルフレッド・ベクトルシェイマー

誰やねん?ややこしいい名前やなあと誰もが思うようで、馬術の世界では「ドクターB」で通ってます。

イギリスの馬術選手カール・ヘスターの自伝『金メダルへの道』を読んでますが、カールが金メダルへの道を歩むことになったのはドクターBのおかげです。

ドクターBはドイツ生まれで馬術が好きで選手としてもコーチとしても有能で、国際大会レベルの試合に出てるし国際大会レベルの選手も育ててます。

自分の娘を指導して、ロンドンオリンピックで銅メダルと言うんですから立派なもんです。

とにかく立派なもんですが、とびぬけて立派なのが奥さんが超億万長者。

どういうわけか40歳くらいで家族でイギリスに移住してイギリス馬術界に大いに貢献してます。

イギリス馬術界の大恩人だそうです。

イギリスは馬術の本場じゃないかと私なんか思うんですが、そうじゃなかったみたい。

カールが馬術の世界に入ったころは、馬術はドイツドイツドイツ、とにかくドイツだったようです。

馬もドイツ、選手もドイツ、調教師もドイツ、馬具もドイツ、乗馬服もドイツ、競技会で勝ちたかったらシャツもパンツもメイドインドイツにしろ!という雰囲気だった。

そのころイギリスのファッションモデルの若い女性が馬術選手として脚光をあびて、やっとイギリスの馬術競技に人気が出てきたようです。

初めてオランダでの国際大会に出たカールは、オランダの観客の大声援にびっくりしてます。

「イギリスの馬術大会なんか公立図書館でやってるみたいなもんだ」

 

10代でイギリスの地方大会で活躍したカールにドクターBが目を付けた。

馬術好きの億万長者の趣味として、高い馬を買ってウデのいい選手に乗らせて大会に出すというのがあるみたい。

そういう億万長者に目をつけてもらうというのは馬術選手を目指す若者の理想ですね。

 

カールはドクターBに呼ばれて馬に乗って見せた。

一週間後、ドクターBから合格通知が来た。

人生で一番長い一週間だったそうです。

素晴らしい環境でドクターBの指導を受けて馬術のことだけ考えて、仕事は競技会に出るだけで馬房掃除なんかは専門のスタッフがいてる。

採用されたと喜んでたらドクターBが、「ところでカネの話だがね」と言いだしたのでカールは「え!カネを払うのか!?」と思って一瞬焦ってしまった。

心配無用、超億万長者です。(奥さんが)

カネもくれるし休暇もたっぷりくれた。

人にも至れり尽くせりですが、馬にもどれだけ気を使ってるかという感じで、カールによれば三ツ星、いや、五つ星、いや六つ星級のサービスだった。

馬の脚にまく布にアイロンを当ててるのを初めて見たそうです。

 

ドクターBに高級馬をあてがってもらってイギリス選手権、ヨーロッパ選手権バルセロナオリンピック、期待に背かない成績を上げて行った。

オリンピックがすんで、カールはふと将来のことを考えた。

馬術選手で食えるわけではない、いつまでもドクターBの世話になるよりレッスンプロとして独立しようか。

堅実ですね。

ところがドクターBが放してくれない。

もう2年ウチにいてくれと頼まれてカールもその気になった。

 

そんなある日、ドクターBの大事な馬を散歩させた後、その馬の脚に異常が見つかった。

ここでミセスB登場。

カールはこの奥さんとはあまりうまくいってないんです。

ミセスBはカールが何かしたのじゃないかと疑った。

何を言っても信じてもらえないのでかっとなって奥さんに向かって大声を出してしまった。

超億万長者ですよ。

イギリス馬術界の大スポンサーですよ。

 

あくる日ドクターBに呼ばれた。

ウチの奥さんに大声を出すとは何事だ。

24時間以内に出て行きなさい。

 

あっという間に馬術界に知れわたった。

バカじゃないの、あほか、もったいない!

カール・ヘスターの運命は?