イギリス障害競馬の大騎手アンソニー・マッコイの自伝を読んで、次にイギリス競馬界最大のイベント「グランドナショナル大障害レース」で勝てなかった騎手たちの話を読んで、一気に「イギリス障害競馬通」になった気分である。
ちょっとかじっただけで専門家気分。
悪いクセである。
競馬に興味はないので勝った負けたはどうでもよろしい。
障害競馬史上に残る名勝負もどうでもよろしい。
競馬以外の話がおもしろい。
「馬をプレゼント」という話が出てくる。
奥さんにプレゼント、子供の誕生日にプレゼント。
「若草さん、乗馬が趣味だそうですね。馬をプレゼントしましょう!」
いらん!困ります!いきなり馬を連れてくるなんて!
ニンジンならもらってもいいけど馬は困る。
子供の21歳の誕生日にプレゼントというのが2回出てきたんですが、イギリスでは21歳というのが意味があるんでしょうか。
馬主が騎手に馬をプレゼントするのもよくあるみたいです。
長年乗ってくれた騎手にその馬が引退したらプレゼントする。
騎手はみんな喜んで馬の余生を共にする。
いい話です。
いい話ですが、そんなことできるんですね。
イギリスには馬を置ける場所もあってカネもそうかからないんでしょう。
アンソニー・マッコイのお父さんも、大工だったけどいずれ馬を飼いたいと思ってて、家を新築した時馬小屋も作ってます。
イギリスの騎手は子供のころから馬と育った人がほとんどです。
まだまだ馬が身近にいるみたい。
中には豚と育った騎手もいて、子供のころから豚に乗るのに慣れてたから落馬なんかするわけない!と豪語してます。
ひとりだけ馬と無縁だった騎手がいます。
お父さんが障害競馬ファンでいつもテレビで見てた。
それを見て「騎手ってかっこいい!カネももうかる!」と思った。
それが第一のまちがいだったと語ってます。
中学生の時、騎手になるために調教師に弟子入りしようと手紙を書いた。
60人ほどの調教師に手紙を出したら4人から返事が来た。
で、その一人を訪ねたら「馬に乗ってみろ」と言われた。
馬はテレビで見ただけだった。
調教師は「キミは向いてない」と言った。
で、乗馬学校に行った。
で、その調教師に弟子入りした。
それが第二のまちがいだった。
障害の騎手になりたかったのに、その調教師はふつうの競馬専門だった。
その後も、第三のまちがい、第四のまちがいといろいろあります。
人生いろいろです。
障害騎手はだいたい30代半ばで引退するようです。
皆さんの骨折歴はすごいです。
「鉄の男」と呼ばれる騎手がいますが骨折しまくりです。
ギプスのままレースも当たり前みたい。
引退してから調教師になる人が多い。
騎手としてより調教師として活躍した人もいます。
後遺症が残ったような騎手は、「傷害騎手基金」の援助でリハビリしたり自分で店を持ったりしてます。
行き届いてると思います。
引退後彫刻家として有名になった騎手がいます。
美術にはエンがなかったけど、馬主に女性の彫刻家がいた。
彼女の作品を見た時、「これなら自分にもできる!」と思った。
なんの理由もなくそう思った。
で、馬の像を作って彼女に見せたら「あなた、馬を見たことないの?」と言われた。
「あ、ありますよ!」
ムカッとしたけど指摘されるとなるほどおかしい。
一念発起、王立獣医大学の解剖学の講座を受講した。
引退後注文が殺到して馬の彫刻家として有名になった。
馬の彫刻なんか需要があるのかと思いますが、西洋は騎馬像ですからね。
社会のちがい、文化のちがい、いろいろです。