今読んでる本に「宇宙服裁判」が出てきました。
最近本の題名をおぼえられません。
英語の本だと始めからおぼえる気がしない。
1954年ミシガン大学で化学を専攻したドナルド・ウオルマスはタイヤの大手グッドリッチ社に就職した。
初任給365ドルというんですから当時の日本円で13万円。
日本で「月給13800円」という歌があった時代ですからアメリカはすごかった。
ウオルマス青年は順調に昇給して1962年には年収1万ドルを超え結婚して女の子が出き幸せに暮らしてた。
グッドリッチ社で何をしてたかというとタイヤじゃなくて宇宙服の開発をしてた。
タイヤの会社だけど早くから飛行服も手掛け、アメリカ初の有人飛行の時も採用されたし、次は月へ行くアポロ計画だと会社をあげて張り切ってた。
そんなとき、ウオルマスに人材紹介会社から電話が入った。
宇宙服分野に乗り出した大手企業インターナショナル・ラテックス社からの引き抜きだった。
この会社は女性下着で有名だったそうですが宇宙服にはタイヤより縁がなさそう。
給料3割アップという話にウオルマスは飛びついた。
ラテックス社行きを決めて上司に報告したら、上司はけわしい表情で「これは裁判沙汰になるかもしれない」と言った。
グッドリッチ社は、企業秘密を知っているウオルマスが競合先に就職するのを防ごうと裁判を起こした。
企業秘密保護か転職の自由か。
この裁判で両社の宇宙服の独自性が大きな争点になった。
「宇宙服」というけど「宇宙船」同様の機能が必要とされる。
企業秘密のかたまりである。
両社は自社の宇宙服を着た男を証人として出廷させた。
見ごたえあったと思います。
まずグッドリッチ社の宇宙服を着た男が法廷に立っていろいろ質問を受けた。
次にラテックス社の宇宙服を着た男が登場すると法廷はどよめいた。
実に奇怪なグロテスクなものであった。
そして10分20分と質問が続くうち宇宙服の男がゆらゆらし始めた。
傍聴人によれば、男は汗をだらだら流し息苦しそうに苦悶の表情を浮かべていた。
しばらくゆれていたが、男は裁判長に向かって今にも窒息しそうな声で「へ、へ、ヘルメットを脱いでもよろしいでしょうか」と叫んだ。
あわてて裁判長は許可した。
この裁判、どう見てもグッドリッチ社の勝ちと思うんですが引き分けだったそうです。