若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

『君といつまでも』

朝日新聞加山雄三さんの「わが人生」みたいなコラムが連載中です。

 

ヒット曲は多いですが『二人だけの海』は私が最初にギターで弾けるようになった記念すべき曲です。

大学美術部のM君に弾き方を教えてもらった。

 

次に衝撃を受けたのは『君といつまでも』。

 

私は46歳のときヤマハエレキギターを習い始めた。

エレキギターの先生というと金髪長髪の若者というイメージだったんですが、S先生は物静かなサラリーマンという感じの人でした。

先生は「元祖エレキ少年」で、学生時代はバンド活動に明け暮れた。

音楽大学で声楽を学び、ヤマハではボーカルとアコースティックギターエレキギターを教えた。

 

先生にとって素人は下手でも構わないというか下手でも仕方ないというか下手な方がいいというか下手な方が面白いというか楽しいというか、教え甲斐がなくてもいいというかない方がいいというか、上手にならなくてもいいというかならない方がいいというか、まあそういう感じの先生でした。

 

上手下手は関係ない!

音楽は人に聞かせるもんじゃ!

とにかく生徒をステージに立たせてやりたい!

そのためには苦労を惜しまない人でした。

 

そういうことを知る前でしたが、エレキギターのレッスンが終わった時先生が「これからアコースティックギタークラスのミニ発表会をするので時間があったら聞いてください」と言われた。

 

で、私と中学2年生男子仲良し3人組とアヤシイ20代エレキギター狂A君とが教室に残った。

アコースティッククラスの若者たちが二、三人演奏して30代半ばと思える男が現れたとき「こいつはうまそう!」と思った。

野武士のような表情、鋭い目で私たちをにらみつけたのはあとで親しくなるB君であった。

 

10年後くらいの発表会で演奏を終えて客席に戻る私をにらみつけてB君は「若草さん、うまくならないねえ」と言った。

そういう人です。

 

初めて見るB君は私たちをにらみつけて「加山雄三の『君といつまでも』をやります」と言った。

「こいつは本当にうまそう!」と思った。

こういう単純な曲をやるんだからよほど歌とギターに自信があるんだろう。

 

彼がイントロのギターをジャジャジャ!と鳴らした瞬間「こいつは下手!」と思った。

そしてギターから目を離し私たちをにらみつけて「♪ふたりをー」と一本調子の愛想のない声で叫んだとき「下手どころじゃないな」と思った。

 

彼はギターに置いた指の位置をを確認するとまた「ジャジャジャ!」と弾いた。

そして私たちをにらみつけると「♪ゆうやみがー」と叫んだ。

 

愛想のない一本調子の声と「ジャジャジャ」というギターがかわりばんこに断続的につながりもなく途切れ途切れに続いた。

 

中学生三人組がくすくす笑い出したけど私は感動した。

これをよく人前に出したな。

まさか私が先生の手によって人前に出されることになろうとは思いもよりませんでした。