唐突、かつ威張るようであるが、私は、弱冠34歳の時に葬儀委員長を務めておる。
ある日、○○さんのおじさんがうちに来られた。
子供の頃から住んでいる地域なので、ご近所全部知り合いで、この70年配のおじさんからも、私は子供の時と同じように、「みのるちゃん」と呼ばれるのである。
「Aさんのおじいさん、亡くなりましてな、町会から葬儀委員長出してくれ言うてはりまんねんがな。みのるちゃん、あんた、やっとくなはれ」
じょ、じょ、じょーだんじゃない!
このあたりの若手中の若手の私が、葬儀委員長だなんて、とーんでもございませんわ、と言う私をさえぎって、
「おたく、今月、町会の班長だっしゃろ。このへんではな、班長が葬儀委員長することになってまんねんがな」
き、き、きーたことない!そんな話初耳です。それに、普通の家のおじいさんが亡くなって、自宅で葬式するのに、葬儀委員長なんかいらんでしょう。
おじさんは聞く耳持たず、とにかく、「町会から出してくれ言うてはりまんねん」「この辺では葬儀委員長は班長がやりまんねん」「あんた班長やから、あんたやっとくなはれ」の一点張り。
そして、「みのるちゃん、葬儀委員長、楽でっせ。なーんにもせんと、立ってたらよろしおまんねん。帳場で金勘定するよりずーっと楽でっせ」
この一言にぐらりと来たのが、ウンのつきであった。
私の「ぐらり」を見透かしたおじさんは、「ほな、頼んまっさ」と言って帰ってしまった。
当日、私は町会の人たちと、葬式につきものの雑用をしていた。
その時、大声で、「葬儀委員長!葬儀委員長!」と呼ぶ声が聞こえた。
私のことらしいな、と思ってると、○○さんが、
「みのるちゃん、あんたでっせ」
わかっとる、と思いつつ、声の方に行くと、葬儀屋さんであった。
「はい」
「!おたくが、葬儀委員長?」
葬儀屋さんは意外そうな表情であった。
「これ、つけてください」
渡されたのは、な、な、なんと!
道路の開通式なんかで、「来賓」と書いた、紅白の花みたいなリボンがあるでしょう。あれの黒白のデカイやつ。
垂れ下がったリボンには、墨クログロと、「葬儀委員長」!
ひえ〜!こ、これ、つけるの?はずかし〜!
出来るだけ目立たないようにと、上着の下のほうにつけて戻ると、○○さんが、にやりと笑って
「みのるちゃん、似合いまんがな」
知らない!意地悪!