「葬儀委員長巨大リボン」を隠すようにして手伝っていると
「葬儀委員長!」と呼ばわる声。
行くと、葬儀屋さんが、「喪主さんが、ごあいさつしたいとおっしゃってます」
座敷に通されると、喪主のおばあさんが座っておられた。子供の頃から知っているが、話したことはない。
おばあさんは、ガバと平伏すると、「このたびは」で始まる堂々たるあいさつを、立て板に水のごとくに述べられた。
「人のよさそうなおばあさん」という印象しか持っていなかった私は驚いた。あの会長とえらい違いである。
私も、葬儀委員長としての決意を述べるべきところであったが、タジタジとなってしまって、もごもごわけのわからんことを言って退出したのは遺憾であった。
しばらくすると、またも「葬儀委員長!」と呼ばわる声。
今度は、「喪主さんといっしょにお寺さんにごあいさつを」
向かいの家が、お坊さんの控え室になっていた。
部屋に入ると、お坊さんが座っていた。
おばあさんは、先ほど同様、ガバと平伏した。私もあわてて、ガバと平伏した。
おばあさんは、先ほど同様「このたびは」で始まるあいさつを、立て板に水のごとくに述べられた。
私は、平伏しながら、この人はどこでこんなことを習ったのだろうかと感心していた。
お坊さんへのあいさつが済んでしばらくすると、またも「葬儀委員長!」
黙って立ってるだけだなんて、話が全然違うではないか。
今度は、「親族写真の撮影です」
なに、それ?
葬儀屋さんに続いて部屋に入ると、祭壇を前に、親族一同の方々が勢ぞろいしておられるではないか!
「こちらが、葬儀委員長さんです」
私は、またもあわててガバと平伏した。
若き葬儀委員長、親族一同の皆様方の注目の的である。
「葬儀委員長、喪主さんのお隣へ」
なぬ!
この私が!最前列!ど真ん中!
おばあさんはニコニコと、「今日はまたえらい若いお方とならばせてもろうて」
皆さんは、アハハ、と笑ってましたが、私には、そんな余裕はありませんでしたね。
写真屋さんが、「葬儀委員長のリボン、見えにくい」
葬儀社の女性が飛んで来て、私がわざと下のほうにつけたリボンを、胸につけなおしました。
このときの写真、ほしかったな〜。
次回は、もう少し落ち着いて、葬儀委員長を務められると思います。