若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

落第の不便

落第して困ったことはない。
ただ、「同窓会」が不便だ。私は3年生のとき落第したため、3年間共に過ごした友人たちと「同期」でなくなってしまった。1年間だけ共に過ごした人たちと「同期」になってしまった。
納得できない。

私が「同期」だと思っている人たちが「正式同窓会」を開いても案内は来ない。それではかわいそうだと思った誰かが、十数年前、「正式同窓会」に出てこいと電話をくれたので初めて出席した。美術部のS君を誘って行こうと思って電話をすると奥さんが出た。

「え!若草さん、同窓会、出るの?」
「うん」
「・・・いい度胸ね〜!」

このとき初めて落第を恥ずかしいことだと思ってる人がいることを知った。
しかし、彼女は福島県の出身だ。田舎ではそうなのだろうと思った。

会場のホテルではクラスごとの受付があった。私のクラスの受付を見ると、Y君だと一目でわかった。
彼も私を見て、「おお!若草君!」と声をかけて、すぐ名簿をチェックし始めた。

「あれっ!?」
私の名前がないのであわてている。
「名前はないと思うよ」
「あるよ。卒業生名簿からひろったんやから」
「いや、いっしょに卒業してないから」
「・・・あ・・・そ、そうか・・・まあ、えーやないか・・・気にせんでも」

気にしてません。こいつも福島県人か。

会場で3年生のとき同じ組だったAさんに声をかけられた。
彼女は生徒会の役員で非常にしっかりした人という印象だった。
私たちは、同じ大学の同じ学部を受けて二人とも合格したのだが、私は卒業できなかったので入学はできなかった。

そんな思い出話で落第の話になったとき、彼女がやさしく言った。
「いいじゃないの、気にしなくても。古い話だもの」
福島県人が多い。

そういう経験があるのでT君があわてて落第の話をそらしたときおかしかった。
「Bさんはどうしてはるのかな」

Bさんは私たちの一年先輩で、美術部きっての秀才だった。
建設省に入って順調に出世しているという話を聞いたことがある。

T君が言った。
「Bさん、まだ葬儀委員長してはるのかな」

葬儀委員長!?!?
いったい何を言い出すのかとあっけにとられたが、T君は真っ赤にならずもごもごとごまかした。
さすが常務取締役だ。