若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ジーンズ

ジーンズ会社が、高級ジーンズの会社を買収したという記事が出ていた。
「高級ジーンズ」というものがあるらしい。

昔は「ジーパン」と呼んでいた。
はじめてジーパンをはいた日のことはよく覚えている。
高校2年のとき、文化祭の準備をするのに、ジーパンをはいて行った。
よほどうれしかったのであろう。友達に冷やかされたことも覚えているので、まだ一般的ではなかったのか。

その頃、私は母が買ってくるものを着ていたので、このジーパンも母が買ってきたのだと思う。

一度だけ、母が買ってきたものに文句を言ったことがある。
パンツです。下着である。
馬がラッパから首を出している絵がいくつも描いてあった。
私は母に、「どうしてこんなヘンな柄のパンツを買ったのか」と聞いた。
母は、「パンツの柄なんかどうでもいいやないの」と言った。
その柄を未だに覚えている。
私の脳に聞きたい。
なぜこのラッパから首を出している馬の絵を大事に保存しているのだ?

十年ほど前、帰りの電車でジーンズをののしっているおじさんがいた。
六十半ばの、酔っ払いであった。
「ほんまにもー!最近の若いやつらときたら、ジーパンはいて、漫画読んで!なさけないわ!」
車内には、ジーパン姿の若者が何人かいて、おじさんの目の前の若者は漫画を読んでいた。

ジーパンいうのはなー、アメリカでは乞食がはいとるんや。それをありがたがって!なさけないわ!ラングラーや、リーバイスやて、ほんまにもー!」

おじさんは、ジーパンとジーパンの若者を攻撃し続けた。
次の駅に止まったとき、向こうのほうで「アホか!」と叫んで、ジーンズ姿の青年が電車を降りて走り去った。

おじさんは、そっちへ急いだ。
そこに立っていたおとなしそうな青年をつかまえて、「おまえか!」と叫んだ。
青年はあわてて、「ち、ちがいます。今降りた人です」と言った。
「おまえの友達か!」
「い、いや、知らない人です」
「ワシはなー、キミらみたいな若者に、しっかりしてほしいんや。日本は戦争に負けて焼け野原になったんや。それを、今のお年寄りが一生懸命働いてここまでにしてくれはったんや。これからはキミらががんばらんといかんやろ。ワシの言うてることまちごうてるか」
「い、いや・・」

ジーンズ攻撃から憂国の議論へと変わって、おじさんの話は延々と続いた。