新聞の書籍広告。
「孫とすてきにつき合う方法」
「今時の祖父母におすすめ」だそうです。
「話題沸騰!」で「増刷御礼」とのことである。
ごていねいである。
孫とのつき合い方まで教えてもらわなくてはならんのか。
そうです。
教えてもらわなくてはならない。
あるいは、学ばなくてはならない。
人間は歌うことも、愛することも学ばなくてはならない。
人間が、生まれながらに学ばずにできることは、八つしかない。
そのうちの一つが、このように口から出まかせを言うことである。
私が、いいかげんなことを口から出まかせに言うのは、誰に教えられたわけではなく、生まれつきである。
さて、孫とのつき合い方は、自分の祖父母が自分にどのように接したかを覚えていればいいのであるが、私のように、生まれる前に祖父が亡くなっていたりすると困るのである。
だから、私はこの本を読んだ方が良さそうである。
娘達が小さい頃、私はよく「馬」になった。
二人を背中に乗せて、「おウマさんパカパカ」なんてことを言いながら、家の中をグルグルはって回っていた。
見ていた家内が、娘たちに言った。
「もういいかげんにしなさいよ。パパがかわいそうでしょ」
その声を聞いた瞬間、私は三十年前のことを一気に思い出した。
父もよくウマになってくれたのである。
黄色い電球の下、私と妹を乗せて、家中はい回っていた。
台所から母が言った。
「もういいかげんにしなさいよ。おとうちゃんがかわいそうでしょ」
全く同じではないか!
実に不思議な奇妙な感覚であった。
私があのときの父になったような、娘達があのときの私と妹であるような、不思議な感覚であった。
私は、ウマになることを学んでいたのでしょうな。
あるとき、私がウマになって娘達を乗せて、娘達が大喜びしているのを見た父が、
「よっしゃ!おじいちゃんがおウマさんになったろ!」と言って、張り切って二人を乗せたが、すぐ、「しんどいわ」と言ってやめてしまった。
私は、おじいちゃんはウマにはなれないということも学んでいます。