若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

寝る人

今朝の電車で、若い女性が眠りこけていた。

ゆらりと右の方に大きく傾いては立ち直る。
何度も繰り返していた。
この程度は珍しくない。

彼女の隣の席は、いつもこの電車に乗っている高校生の男の子で、バスケットボールクラブの名前の入ったバッグを持っている。
身長190センチはある。

目立ちたくないのであろう、座っている時はいつも前かがみになっている。
だから、彼と背もたれの間にはかなりの空間があった。

ゆらゆらしていた女性が、右に大きく傾いたかと思うと、すぽっとその空間にはまり込んでしまった。
そして、そのまま寝ていた。
高校生は、たぶん困ったと思うが、表情を変えずにじっとしていた。

これなんかはまだましであるが、後頭部を窓ガラスにもたせかけて、がばーっと口を開けて寝ている人は気の毒である。
特に女性は気の毒である。

私は寝つきの悪い方だった。

幼稚園の時、夏になると、「お昼寝の時間」があった。
広々した「お遊戯室」で、ござを敷いて寝るのであるが、このときどうしても眠れない。
すやすや眠る子が不思議だった。

幼稚園から、プラネタリウムに行ったことがある。
このとき、何人もの子が、「夜と間違えて」寝てしまったのにも驚いた。

当時同居していた伯母が、枕元にタマネギを置くと良いというので、やってみたが効果はなかった。

そんな私なので、十年ほど前、友達と酒を飲んで、帰りの電車で寝てしまったときは感激した。
感激するようなことではないと思われるであろうが、私は感激したのだ。

その後も何度か寝ているが、もう感激はしない。

いつも、あとひと駅かふた駅、というあたりで寝る。
「ひょっとすると寝るかもしれん。隣の人に一言頼んでおこうか?まあ大丈夫だろう」と思ったら、終点まで行ってしまったこともある。

ある飲んだ夜のこと、電車内でふと気づくと、
「つきましたよ〜、つきましたよ〜」
と歌うような声がした。

声の方を見ると、中年の女性が、ニコニコ笑いながら私を見ている。
中年女性のグループがぞろぞろと降りて行くのであるが、その人は私にニコニコ笑いながら、
「つきましたよ〜、つきましたよ〜」
と節をつけて歌っている。

私は、ばっかじゃなかろーか、と思った。

その人は、ニコニコしながら
「つきましたよ〜、終点ですよ〜」
と歌った。

それをはよ言え!