若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「愛する人のために」

テレビで箱根駅伝を見ていた。

とにかくコマーシャルが多い。
ただエンエンと走っているだけだから、いくらでもコマーシャルを入れられるので調子に乗って入れまくる。

今年は日本生命のコマーシャルが気に入った。
「保険にはダイヤモンドの輝きもなければ、パソコンの便利さもありません。・・・お金に愛情をこめることはできます。・・・もし愛する人のためにお金が使われるなら」
オエッ!

仕事とはいえ、こういうしょーもない文章を作ってる人がいるのだと同情する。

テレビを見ながら、「月刊陸上競技1月号別冊付録:箱根駅伝観戦ガイド」を読んでいて驚いた。

愛する人のために    谷川俊太郎

保険にはダイヤモンドの輝きもなければ
パソコンの便利さもありません。
けれど目に見えぬこの商品には
人間の血が通っています。
人間の未来への切ない望みが
こめられています。
愛情をお金であがなうことはできません。
けれどお金に
愛情をこめることはできます。
生命をふきこむことはできます。
もし愛する人のために
お金が使われるなら

日本生命

谷川さんは、小学校の国語の教科書用の詩を量産する人だと思っていたが、先日、演歌も作ることを知った。
CMも上手だ。
器用な人である。

私も同じ詩人として行の区切り方が非常に参考になった。
「けれどお金に」で行を変えるところがすばらしい。
谷川さんの優しいまなざしを感じる。

最後の「日本生命」というのも、谷川さんが特注の高級万年筆で特注の高級原稿用紙に書いたのだろう。
「日本・・・・生命」と書き付ける谷川さんの満ち足りた表情が目に浮かぶ。
最近スランプ気味だった谷川さんの久々の傑作だ。

感激のあまり谷川さんに私の詩を捧げちゃおう。

「谷川さんのために   若草鹿之助

谷川さんの詩には人造ダイヤモンドの輝きがあります
使い捨てカイロのようなあたたかさもあります
けれど谷川さんの詩という商品には
魂がこもっていません
保険は、人間の未来への不安につけこむものです
お金で詩をあがなうことはできません
詩の出来損ないをあがなうことはできます
どうでもええけど、なぜあがなうなんて難しい言葉を使うんですか
出来損ないの詩でも使い道はあります
もし出来損ないの詩が
生命保険のCMに使われるなら

若草鹿之助商店」