若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「ふんどしの重み」

ふんどしが男性用下着としての座を去って久しい。
私が子供の頃すでに伝統行事以外で見ることもない、時代遅れで品がなくこっけいなものという感じだった。

近所の正雄ちゃんの家に鳥取のおじいちゃんが来て住むことになった。
おじいちゃんは小柄で頭のはげた人だった。
夏に越中ふんどし一つで朝顔に水をやる正雄ちゃんのおじいちゃんの姿が、小学生の私に強烈な印象を与えた。

中学のとき、森繁久弥主演の『ふんどし医者』という映画が話題になった。
江戸時代に庶民のためにつくした医者の話だ。
ある映画評論家が「このタイトルでは女性客は来ない」と書いていた。
なるほど、と思った。
男がガールフレンドに「『ふんどし医者』を見に行こう」とは言えない。

大学に入って町工場でアルバイトをした。
四十年前の町工場には、中卒の地方出身の若者がたくさんいた。
昭和20年代に徳島から出てきたという工場長の昔話を聞いたことがある。
「大阪に来て初めて風呂屋に行ったときはびっくりしたなー。ふんどししてるの、ワシだけや。恥ずかしかった!」

「ふんどし」は漢字で「褌」だ。
難しい字ではないが、「褌」と書いたことのある人は極めて少ないだろう。
ワープロが普及した結果生じた害に「漢字の使いすぎ」がある。
手書きでは書かないような漢字でも変換すると出てくるのでつい使ってしまう。
私はそういう漢字はできるだけ「かな」に戻すようにしている。

インターネットで文章を読むとき辛いのは字が小さいことだ。
若い人にはなんでもないのだろうが、「漢字の多用」と「字の小ささ」がいっしょになると私には悲劇的だ。

先日、インターネットである人の日記を開いて思わず首をひねった。
「褌の重みを感じた」という文章が目に飛び込んできたのだ。
「褌を渡せてよかった」とも書いてある。
読みにくい小さな字だ。

なんだこれは?と思って題を見た。
箱根駅伝

そうか!
「褌」ではなく「襷」だったのだ!
手書きなら「たすき」でしょう。
今年の箱根駅伝で、脱水状態になった選手がふらふらになりながらもたすきを渡したシーンに感激したという話だ。

感激するのはいいけれど、字は大きく!漢字は少なく!
それでなくても「少子高齢化問題」「靖国問題」などで悩みの多い私を、「褌襷問題」で悩ませないでほしい。