若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

『天皇・天皇制・百姓・沖縄』

著者の安良城盛昭さんは、東京大学助教授、沖縄大学学長、大阪府立大学教授という経歴で経済史が専門である。非常に攻撃的な人だと思った。

歴史家の網野善彦さんを徹底的に批判している。いろんな資料をあげての全身全霊的批判である。私は網野さんの本を何冊か面白く読んだが、ここまでこてんぱんに書いてあると網野さんが重大な誤りを犯しているように思ってしまう。「網野氏も『偉くなったものだ』」なんて、なかなか書けませんよ。

安良城さんは、世の中わからないことだらけなのでいろんなことを知りたいと熱望する研究者である。「経済史」といっても、女性問題にもぶつかるので化粧法や女性下着についても研究する。「こしまき」について詳しく書いてある。現代の女性下着を集めるのは楽しいとは書いてない。

さて、この本のハイライトは犬の研究についてだ。安良城さんは一時犬の研究に熱中した。それはいいんですが、
「そのことも一因となって精神異常者扱いされ、精神病院に監禁されるというひどい目にあったこともある」
こ、これは・・・・(-_-;)

なぜ犬を研究したか。中世日本の農民は奴隷だったのかどうかという問題について考えていて、奴隷と犬は似ていると思ったのだ。どちらも子供が生まれても主人が勝手にどこかにやってしまう。
で、犬の研究を思い立つ。
できれば西洋犬と日本犬を飼いたいが貧乏なのでできない。ならば血統書つき西洋犬と血統書つき日本犬の雑種を飼えば、両方の特質がわかるはずだ。
学者の考えることはちがいますね。

苦労して探して理想の犬「エル」が来た。
奥さんに質問。
「エルはなぜウチの犬だと言えるか」
「区役所に届けたからでしょ」
安良城さんはムカッとする。
「経済史家の女房が、法制史家の女房のようなことを言ってもらいたくない」。
「家内は歴史学の素人だから仕方がないが、エルはウチの犬だから区役所に登録できたのであって、登録したから所有が発生したと考えるのは誤りだ」と奥さんをたしなめた。

エルを飼うに当たって立派な犬小屋と運動場を用意するため、安良城さんは出版社に本を出す約束をして印税を前借した。「二十年たった今も約束の本はできていない。これは世間常識から言えば詐欺に当たるだろう」

精神病院の一件が詳しく書いてないのが残念である。