若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ぼくのおばさん

昨日母のいる施設に行った。

母は、ここ数年車椅子にすわっているだけで、ほとんど反応がないような状態で安定している。「安定している」というのは、非常に肯定的な表現であると思えて、こういう場合に使うのはヘンかなとも思うが、ほかにいいかたもなさそうだ。
昨日は、その、ここ数年の安定状態から、一段階下がったように思えた。
看護婦さんの説明では、ものを食べる時誤って肺のほうへ入ることがあり、肺炎を起こしやすいそうだ。年をとると、気管支の弁が弱ってどうしてもそうなるらしい。91歳というトシ相応の状態だ。

私の首や腰が痛いのもトシ相応で、仕事をしたり本を読んだりするのがよくない。ふつうに生活するのが身体によくないのだ。

母くらいになると、ものを食べるのも命がけだ。
母は、生きていくのが身体によくない。
困ったもんだと思って帰ったら、叔母から電話がかかっていて家内が話している最中だった。
父には姉が五人いたが全員死んでしまった。
母には兄と弟が四人いたが全員死んでしまった。

母の妹だけが元気でいる。
八十半ばであるが電話の声は大きく、はっきりしている。
『今日はラッキー!』を送ったので電話をくれたのだ。

「ひとつずつがちょうどいい長さだわ。はじめのほうを忘れたりしないでいいわ」

新鮮な指摘であった。

「絵ばっかり描いてると思ってたわ。おもしろいこと書くんだねえ。きっとお父さんに似たんだね」

母方はだいたいまじめでかたい。
母にもいわれたことがある。
「あんたは中学くらいまでまじめやったけど、だんだんお父さんに似てきた」
残念そうであった。

おばはずっと関東にいて、二人の子供を育てながら勤めていたので、会う機会は少なかった。おじ、おばの中では一番縁が薄いといえる。
しかし、私が生まれた時、手伝いに来てくれたそうだから、大変お世話になっているのである。

母は、おばの子供に、私と妹のお古を時々送った。
私も、いとこのお古を送ってもらっていた。

母がお古を送ると、おばの主人から礼状が来る。
いつも半紙に子供の遊ぶ写真が何枚もはりつけてあって、「○子はかくれんぼが大好きです」というような説明文がついていた。

ある時、母がそれを見ながら、「Kさんは子煩悩やネエ」といった。
私は、「こぼんのう」というのは子供が好きということだろうなと考えた。