今回も、大勢の人といっしょに写真をとった。
私が若草鹿之助になって二年目に、「いっしょに写真とってください」と言われるようになった。
一年目は、地味な衣装だったから、その値打ちがなかったのだろう。
二年目の会場でCDを売っていたら、買ってくれた人が、いっしょに写真をと言う。
たまたま聞いた曲が面白くてCDを買った。
歌っている本人といっしょに写そう。
これはわかる。
不思議に思ったのは、若い女性が、CDも買わずに、写真だけ写してくれと言ってきた時だ。
「CDは?」
「いりません」
これはわからない。
有名人でもなければ、話題の人でもない。
いっしょに写してどうする?
今回も、老若男女、いろんな人から言われた。
80歳前後と思える老夫婦と写した。
これは魔よけのつもりかもしれない。
喘息に効くと思われたのかもしれない。
人は、キンキラキン衣装の人といっしょに写りたいのか。
鹿せんべいとばし大会の帰り、駅で強烈な服装の若い女性を見かけた。
どう説明していいかわからない。
一応ロングドレス。
スカート部分が分割されている。
天平白鳳、あるいは唐三彩の女、シルクロードに栄えた謎の王国の皇女。
こういう人と並んで写真をとりたいか。
とりたい気もする。
小学校の時、学校に鉄棒のお兄さんが来たことがある。
あれはなんだったのか。
校庭に鉄棒を立てて、私たちの前で大車輪などをやって見せた。
終わってから、大勢お兄さんにサインをもらいに行った。
もらってどうするのかな、と不思議に思った。
大阪万国博の時、世界各国のパビリオンにいる外国の人に大勢サインをもらっていた。
鉄棒のお兄さんもパビリオンの人も、特別の存在ではない。
と言って、完全なる日常のなんでもない人でもない。
だから、サインがほしいのか。
町を歩いている誰でもいいからサインをもらう趣味の人はいるだろうか。
そういう趣味があってもおかしくない。
しかし、なんと言っても今回のハイライトは、あの男の子だ。
おとなしそうなあの子が、サングラスにキンキラキン衣装の私に、「握手してください」と言うのは、大変な勇気が必要であったと思う。
少年の勇気に敬意を表します。