ベストセラーということで買った。
カバーに、茂木健一郎さんのことば。
「福岡伸一さんほど生物のことを熟知し、文章がうまい人は稀有である。サイエンスと詩的な感性の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す」
文章がうまいとか、詩的な感性というと、趣味の領域、好き好きである。
カバーから、危険なにおいがただよう。
目次
第1章:ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
第2章:アンサング・ヒーロー
第3章:フォー・レター・ワード
第4章:シャルガフのパズル
第5章:サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
第6章:ダークサイド・オブ・DNA
なんじゃこれは。
ワシをなめとるんか。
おちょくっとるんか。
まあ、著者は、京大卒、ハーバード大学医学部研究員、京大助教授などを歴任し、第一回科学ジャーナリスト賞を受賞した人だから、なめられようと、おちょくられようと、おとなしくしていたほうが無難だ。
カタカナまみれのところに、詩的な感性を感じるべきなのかもしれない。
マンハッタンのビルの説明。
「スタイリッシュな国連本部ビル。アールデコのクライスラービル。白い羊羹を削ぎ切りにしたようなシティコープビル」
白い羊羹?
国連ビルがスタイリッシュッで、クライスラービルはアールデコなのに、シティコープビルは羊羹?
総本家井村屋ビルが白い羊羹なら納得だが、マンハッタンに白い羊羹というのは詩的である。
「山麓のかそけき樹木のざわめき」「たゆたう」「研究者の膂力」「久闊を叙する」とか、私好みでないことばが多い。
著者が過ごした、ニューヨークやボストンの町についての感傷的な文章も、気に入らなかった。
書いてあることはわかるが、気に入らん。
しかし、それはどうでもいい部分だ。
肝心の、「生命とは何か」という点になると、気に入るも入らないも、なにが書いてあるかわからなかった。
この本は、面白いエピソードが少し、本題と関係ない気に入らん文章が半分ほど、そして、残り、つまり本題については理解不能であった。
私にはこの本について書く資格がないと思う。
こういうと、私の知能程度を疑う人もいるだろうが、潔さを認めてくれる人もいるだろう。