最近、あるホテルで、桂米朝の落語を聞いた人の報告を読んだ。
同じことを何度も言うので、ハラハラしたそうだ。
「人様に笑われないように、というのがふつうだが、落語家は・・・」というのを三度繰り返した。
観客は、好意的だった。
報告者は、落語だから許されるのだろうと書いていた。
落語に限らないようだ。
高田渡という歌手は、演奏会で歌っている間に寝てしまうことがあるそうで、やはり客は好意的らしい。
セロニアス・モンクというピアニストは、モダンジャズ界の奇人で、演奏中にステージをウロウロ歩き回るので有名だった。
やはり、客は喜ぶ。
「まじめに演奏しろ!」と、モンクに文句を言う人はない。
ファンはありがたい。
ファンになると、何でもいいのかもしれない。
突発的なことに立ち会えて、うれしいのかもしれない。
古今亭志ん生も、「落語の途中で寝てしまった」というので有名だ。
私は、志ん生の落語は好きだが、寝るのを見たいとは思わない。
本当のファンではないのだろう。
私は、ビートルズが好きだが、ジョン・レノンや、ポール・マカートニーが、歌ってる途中で寝てしまうのを見ても、うれしくないと思う。
リンゴ・スターが、ドラムに突っ伏して寝るのを見たいとは思わない。
超多忙だった彼らだが、演奏中に寝たというエピソードはないようだ。
昔、桂米朝企画「日本の話芸の源流を探る」というような催しに行ったことがある。
わけのわからない「芸」が披露された。
出演者は、超高齢で、米朝が「楽屋に医者が待機してます」と言っていた。
しかし、途中で寝たり、同じことを繰り返した人はなかった。
昔々、野上弥生子さんが、高齢の文学者の文章を攻撃していたことがある。
同じことを繰り返したり、ボケてるのじゃないか、というような内容だった。
編集者は、何をしているのか、というようなことも書いていたと思う。
野上さんが高齢になったときの文章にも、似たようなのがある。
編集者は何をしているのかと思った。
落語で、同じことを繰り返したり、意味不明のことを言ったりしても、喜んでくれるファンがいるが、文章はそうはいかないのがつらいところだ。
(私のことではありません)