若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

桂文治さん

1月31日に、桂文治さんが亡くなったという記事が出た。
80歳ということで、そんなお年だったかと驚いた。

私はこの落語家が好きだった。
というか、訃報を見て、好きだったことを思い出した。

長年忘れていたのだから、ファンということはない。
ただ、テレビでこの人を見るとうれしくなったのだ。
私が手放しで好きな落語家だった。

話の途中で、「う〜ん」とつまるのがいい感じだった。
古今亭志ん生の、芸術的「う〜ん」ではなく、困っているような困っていないような、中途半端な「う〜ん」なのであった。

今日、教育テレビの「日本の話芸」で、桂文治さんの落語を放送した。
この番組はよく見る。
講談や落語を放送するのだが、落語は、東京、大阪の面白くないものばかりを選んで放送しているとしか思えない。

今日は、文治さんの1月16日の高座を録画したものだという。
亡くなる二週間前だ。
さぞ力のない、面白くないものだろうと覚悟していたが、驚いた。
実に若い、昔の「桂伸治」のままの高座のように思った。

マクラで、江戸の商人のていねいな話し振りや、職人の気風のいい言葉を大切にして残したい、という話や、一昨年、そういう趣旨の本を出版したらおかげさまでよく売れているという話をした。
普通、この手の話は、一人よがりでいやみに聞こえるものだ。
そして、説教じみるものだ。

ところが、この人がすると、「江戸言葉が好きなんです」という思いだけが伝わってくる。

話は、「長短」という、気の短い人と長い人に関する、完全に「毎度バカバカしいお話」であった。
このバカバカしい話を、全く大げさでなく、淡々と語る。
おもしろい。
こういう人の話を聞いていると、「おかしい」とはどういうことか、「笑える」とはどういうことかワケがわからなくなる。

完全に楽しかった。