若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

サックス科

この発表会は、ボーカル科とサックス科合同で、サックス科の指導は、女性講師のY先生である。
サックス奏者として、バリバリ活躍中だ。

私が、エレキギターを習い始めたころ、奈良の教室でサックスを持ったY先生を時々見かけた。
可愛い生徒がいるなと思った。
先生だと聞いてびっくりした。

そのころ、先生と話をしても、ウチの娘たちと同じような感じで、「先生」という気がせず、変な気分であった。

大学を出たとこだったのだろう。
あれから十六年、ということは・・・細かい計算はやめておこう。

当時、奈良のサックス科に、某大病院のお医者さんが何人もいた。
そのうちの一人、K先生に、父は肺がんの手術をしてもらった。

K先生の話によると、あるドクターがヤマハでサックスを習いだした。
「先生がべっぴんさんだ!」というので、次々に習う人が増えたそうだ。
わかりやすい話だ。

半年ほど前、奈良の教室で、ドラムのIさんが受付のT嬢と立ち話をしていた。
「ここは、サックスの先生だけ、えらい美人やね」

問題発言だ。
助け舟を出さねば。

「いや、奈良のヤマハはね、サックスの先生と、受付の女性が美人で有名なんですよ」

T嬢はうつむいてしまった。
助け舟にならなかったようだ。

私が習い始めて二年目だったか、発表会の後の飲み会に移動するのに、Y先生の車で行ったことがある。
先生は、免許取りたての車買いたてであった。

後部座席に、ドラムやベースの先生たちが乗り込み、私は助手席に座った。

「わ〜ん、私の運転でいいのかな?キンチョーするな」

あくまで可愛い十数年前のY先生であった。
真冬である。
ガラスが曇る。

「くもり、とりますね」

先生がスイッチを入れ、私に向かって冷気が、ブワーッと吹き出した。
ふるえあがった。
しばしのしんぼうである。

車が走るにつれ、温まってくるであろうと思ったが、なかなか温まらない。
温まらないどころか、風がますます冷たくなっているように思える。

つ、つ、冷たい!
凍えそうだ。
何しろ免許取りたて、スイッチ操作ミスということも考えられる。

「先生、ひょっとしてこれ、冷房じゃないですか」
「冷房ですヨ!」
「れ、れ、冷房!?暖房にしてください!」
「えーっ!くもり取るのって、冷房じゃなかったんですか?いや〜ん!」

危うく凍死させられるとこであった。