駅で、電車を待っていた。
少しむこうに、70歳半ばと思える、上品そうな老夫婦が立っていた。
二人とも、きれいな白髪で、にこやかに話している。
いい感じですね。
見るともなく、ベンチの方に目をやると、派手な若い女性がすわっている。
大学生だろうか。
大きなサングラスをかけて、茶色の髪が逆立っている。
白いビラビラの服に、半ズボンというか、短パンというか、まあとにかく大胆に太ももを見せびらかして、靴はというと、歩くのには不向きだが、転ぶのには便利そうなハイヒールだ。
おしゃべりしていた老夫婦の、奥さんのほうが、ベンチの女性に視線を向けた。
近頃の若い子は、という感じで見ているな、と思ったら、ご主人も若い女性のほうを見た。
「ああ!みさちゃん!」
ベンチの女性は、ぱっと顔を輝かせて、二人の方へ、ちょこちょこ歩いていった。
「おじいちゃん!おばあちゃん!」
おばあちゃんは、まだぽかんとして、みさちゃんを見ている。
「・・・あら、まあ!・・・みさちゃん!」
「あはは、おばあちゃん、みさこ、忘れたん?」
「いや、忘れはせんけど・・・えらいかっこした子がいるなあと思って見てたんよ。まさか自分の孫とは思わんかったわ。みさちゃん、どこ行くの?」
「学校」
「学校って、そんなかっこうで学校に行っていいの?」
「んも〜〜!そんなかっこうって!?」
電車に乗る。
ドアにもたれている中年男性の顔を見た瞬間、「知ってる!」と思った。
知ってる顔だ。
見たことのある顔だ。
よく見た顔だ。
う〜む・・・。
取引先ではないな。
銀行か?
市役所?商工会議所?
う〜む、とうなってる間にその人は降りてしまった。
がんばったが、どうしても思い出せなかった。
帰りのバスで、考えもしないのに、ぱっと思い出した。
通勤の電車で、しばらくいっしょだった人だ。
日記にも書いたことがある、「中年男性Bさん」だ。
http://www3.diary.ne.jp/search.cgi?user=308273&cmd=show&num=2003022151045813257&log=2007130411&word=座席はこう取れ
私の脳に聞きたいですね。
一生懸命思い出そうとしてるとき思い出さないくせに、思い出そうともしてない時、なぜ突然思い出すのか。