自画像を描く。
家内が、「また描いてるの!?」とあきれたようにいうが、自画像ばっかりでかわいそうだから、モデルになってやろうという親切心はない。
マネとドガの模写をしたのに、それが全然活かされない。
フランス人女性をモデルに描けばいいのだろうか。
模写をした二枚の方が、私の「オリジナル肉筆油絵」より、はるかに魅力的である。家内も、同感だという。まあ、なんといっても、美術史に残る二枚だ。同感はいいのであるが、「模写だけにしたら?」という。
即座には否定できない。
ちょっと考えさせてください。
音楽でもいっしょだ。ヤマハの発表会でも、オリジナル曲を聞くより、ヒット曲を聞く方が、気が楽である。
さて、自画像であるが、これまでに7、8枚描いているが、どれも難しい顔をしている。鏡とにらめっこで、サア、描くぞ!と気合を入れて見つめるから、どうしても、こわい顔になる。
私の特徴といわれる、深い知性がにじみでた神秘的で柔和な表情が描けていない。
今回は、「鹿之助の微笑」をテーマに描く。
鏡を見るときに、にっと笑ってみる。
そしてキャンバスに向かうときには、ぐっと顔をひきしめて描く。
いい感じだ。
鏡を見て、にっと笑う。
キャンバスに向かって、一転、ぐっとひきしめて描く。
その調子!
また鏡を見て、にっと笑う。
すばやくキャンバスに向かって、さっとひきしめて描く。
よっしゃ!
繰り返すうちに、こんがらかってきた。
鏡に向かって、ぐっと引き締まった表情をして、キャンバスに向かって、にっと笑ってしまう。
なんかヘンだなと気づいたが、時既に遅く、ヘンテコリンな絵になったので、描きなおすことにする。