若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

古酒泡盛

高校時代の友人、S君N君と飲む。

十日ほど前に飲んだところだが、S君が、N君の住んでいる東花園で飲もうと言ってきた。

近鉄奈良線東花園は名もない駅だ。
いや、名前はある。
マイナーな駅だ。

二、三年前から、やっと準急がとまるようになった。
S君は大阪から、私は奈良から、各駅停車でとろとろたどりついた。
駅前が意外ににぎやかなので驚いた。

私のようなトシの男から見るとおしゃれな感じと思える店で飲んだ。

S君は焼酎党だ。
焼酎党が増えて、私みたいな日本酒党は少数派になってしまった。

S君が、メニューを見て泡盛にするという。
N君も泡盛

いろんな泡盛がそろっているなかから注文した。
持ってきたのを見ると、ウイスキーみたいな色だ。
S君が、ええ色やなあ、と舌なめずりをした。

琥珀色やね。三年以上寝かせた古酒になると、こういう色になるんや。古酒と書いて『クース』というんやで。何年も寝かせるうちに、黒麹のアミノ酸ガラクトース変性を受けてこういう色がつくんや。この色やと、そうやなあ、まあ、十年ものかな」

N君が、「甘酸っぱい香りやなあ」と声をあげた。
「古酒やからね。黒麹のアミノ酸ガラクトース変性を受けてそういう甘酸っぱい香りになるんや。ふむふむ、この香りやと二十年ものかな」

一口飲んだN君が、「これは甘口やな」
「古酒やからな。黒麹のアミノ酸ガラクトース変性を受けて、まったりとした甘みが出てくるんや・・・ウン?・・・かなり甘いな・・・これは古酒にしても相当変わった味やな。三十年ものかな」

古酒泡盛の三十年もの!
私も一口だけ飲ませてもらおう。

「ウエッ!これ、梅酒とちがうんか」
「素人はこれやから困る。古酒泡盛は、黒麹のアミノ酸ガラクトース変性を受けて糖度が増して、梅酒に似た味わいになるんや」

飲みながら、N君が首をかしげて、「おい、これは梅酒やで」
「おまえまで何を言うんや。古酒泡盛は黒麹のアミノ酸ガラクトース・・・うん?・・・これは・・・梅酒やな。おねえさん!」
「は〜い!」
「この泡盛やけどね、梅酒入ってるのとちがう?」
「入ってます!」
「は、入ってます!?」
泡盛ベースのカクテルみたいな・・・」
「書いといてくれんとあかんがな」
「書いてますけど」

S君は小さな字の説明を読んでいなかったのです。