今日は料理教室。
オーストリアのお菓子「リンツァートルテ」を作る。
行くと、教室にテレビカメラが入って撮影していた。
ローカル局の、情報番組というか宣伝というか、まあ、なんか、そんな番組用の撮影らしい。
何を撮影するかというと、バレンタイン用のハート型チョコレート製作風景を撮影するそうだ。
撮影といっても、カメラをかついだ若者と、カメラから出ているコードの先にいる若者と、監督みたいな若い女性と、チョコレートを作る生徒に扮する若い女性の四人組という、少数精鋭である。
撮影を見ていたら、料理教室のスタッフに声をかけられた。
ここのスタッフは、ウチの娘より若そうな女性ばかりだ。
「鹿之助さんも、今度バレンタイン用のチョコ、作ってみませんか」
「なんで私が」
「いいじゃないですか。それと、来月のメニューになるんですが、マシュマロも作ってみたらどうですか」
「マシュマロ?」
「バレンタインのお返し用ですよー」
「バレンタインチョコとお返しのマシュマロ?なんで私がそんなけったいな一人二役せんならんの」
「いーじゃないですかー。あ、それから、この撮影のあと、インタビューに答えてもらっていいですか?料理を習い始めたきっかけとか・・・」
「・・・いやー、それはちょっと・・・」
「いーじゃないですかー。顔にはモザイクかけて、声も変えますから」
「なんでやねん」
私が、今日の料理、「リンツァートルテ」を作ってる間に、撮影は順調に進んでいた。
生徒役の女性が、型に入れたチョコレートをオーブンに入れて、カメラに向かってにっこり笑い、「私のチョコレート、誰がもらってくれるのかしら?」などとぶりっ子していた。
リンツァートルテを作り終わると、私へのインタビュー。
カメラの若者が、私に、「おとうさん、テーブルの向こうでお願いします」
お、おとうさん・・・。
監督みたいな若い女性が、「おとうさん、もう少し右で」
もう一人の若者が、「あ、おとうさん・・・」
なんじゃ!キミたち!
おとうさんおとうさんって。
さっきまで生徒に扮してチョコレートを作ってた女性が、インタビュアーに変身。
どうせ放映されることはないだろうと、テキトーに答える。
せっかく作った「リンツァートルテ」を写してほしいと言ったが無視された。