若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』

朝日新聞書評欄。

中谷さんは、「構造改革規制緩和」推進派だったが、最近になって、あれはまちがってました、と告白懺悔してるようだ。
この本は、「告白懺悔本」らしい。

「告白懺悔本」を出すのは、いい度胸だ。
恥ずかしくて、山にこもってしまった、というならわかる。
にっこり笑って「告白懺悔本」とは、なに考えてはりますねんと言いたいが、この人は何も考えてませんよ。

中谷さんの講演を何度か聞いたことがある。
ある金融機関が、年何回か講演会を開いていた。
例年、一月の講師が、当時一橋大学教授の中谷さんだった。
講演会の目玉だったんですね。

いつも司会者が、中谷先生は、先ほど大阪に着かれまして、この講演が終わるとすぐ東京へもどられます、と売れっ子振りを強調していた。

中谷さんは、自信に満ちた明快な話し方で、聴衆をひきつけていた。
私も、話には引き込まれたが、なんか、うさんくさいところがあるように思えた。

いつも、勝ってる側につく人、という感じなのだ。

ジャパン・アズ・ナンバー・ワンの時代、中谷さんが「日本式経営が素晴らしい」と力説したことがあった。

「日本の大企業と中小企業の関係は、その場限りでなく、新製品の発想段階から、長期間協力する強固なもので、いわゆる系列である。これが日本経済の強みで、ケイレツは英語にもなっている」

なるほど。
そういうことなんだ、と納得した。

バブル崩壊後、中谷さんは、日本式経営はダメだと力説したことがある。

アメリカでは、その時その時のドライな企業関係が緊張感となり、経済に活力を与えている。日本のように、系列で甘えているようではダメだ」

なるほど。
そういうことなんだ、と、この話だけ聞いた人は納得するだろう。

軽薄短小」業種を持ち上げていたことがある。
任天堂をほめていた。
あちこちでほめたので、ある会合で、日立の社長に文句を言われた。

「先生は、任天堂任天堂とおっしゃいますが、ウチは何万人雇用してるんです。任天堂は、何百人でしょう。その点は認めていただきたい」

「私は言ってやったんですよ。あなたのようなところが優秀な人材を抱え込んでるからダメなんです。どんどん放り出してください」

「なぜ自壊したのか」とは、他人事みたいで、相変わらず中谷さん調子いいです。