乗馬クラブ。
馬には乗ってみよ、人にはそうてみよ、とはもっともな話だと思うが、私みたいな素人には、乗ったってどんな馬かわかりませんよ。
だいたい、馬の顔がわからない。
みんな同じ顔に見える。
通い始めて半年ほどになるので、人の顔はおぼえた。
馬の顔はダメ。
馬の顔がわかる人もいる。
向こうから来る馬を見て、「ミッキーちゃ〜ん」とか声をかけている。
すごいと思う。
クラブに行くと、まず馬小屋から馬を出して、「洗い場」というところに連れて行く。
洗い場に十頭ほどの馬が並ぶ。
それから、馬具を取りにいって、自分の馬に装着する。
先日、馬具を着けていたら、先生が、「鹿之助さん、その馬じゃないですよ。隣ですよ」
自分が連れてきた馬の顔がわからなかったのだ。
馬具を装着したら、馬の足にサポーターを巻く。
これは先生がやってくれる。
今日、馬具を装着して、先生を待っていたら、隣にいた中級クラスの男性が、私の馬にサポーターをつけてくれていた。
時々見かける人で、40代と思えるがっしりした男性だ。
初心者の前期高齢者の手伝いをしてくれてるのだと思って、「どうもすみません」といったら、一瞬ぽかんとして、「あ!隣か?」と焦っていた。
中級でも、馬の顔は見分けられないようだ。
久しぶりで、Sさんという中年女性といっしょだった。
Sさんは夫婦で始めて、そのうち高校生の息子も通いだした。
息子も時々いっしょになるが、可愛い子だ。
私より少し前に始めたのだが、もちろん高校生だから、私よりかなり上のクラスに進んでいる。
Sさんの話では、息子は今では週二回、馬小屋の掃除に来ているという。
「よほど動物好きなんですね」
「いえいえ、動物は嫌いだったんですよ。イヌも猫も嫌いで、ディズニーランドへ行くのもダメだったんです」
「?ディズニーランドに動物がいるんですか」
「ミッキーマウスとか、ぬいぐるみがいるでしょ」
「?」
「ぬいぐるみもダメだったんですよ。主人と乗馬を始めて、息子に乗ってみる?って聞いたんです。いやだというと思ったら、ついてきて、乗ったら、はまってしまったんですよ。今ではすっかり動物好きで」
ふ〜ん。
馬には乗ってみよ、ですね。