『堤中納言物語』の中の「虫めづる姫君」は楽しい話だ。
お姫様が、毛虫や青虫をかわいがる。
昆虫ファンのお姫様なんて、いたのだろうか。
と疑問に思うのは、現代でも、昆虫ファンの女性が少ないからだろう。
いや、少ないかどうか知らない。
知らないのにそう思ってしまうほど、昆虫は男のイメージである。
きのう、電車で、捕虫網を持った女子高生を見かけた。
学校帰りと思える、制服姿のおとなしそうな子だった。
買ったばかりの捕虫網で、網の部分にフィルムがかぶせてあって、「虫取りネット」と書いてある。
地味な感じの子なので、「虫めづる姫君」という雰囲気ではないが、「虫めづる女子高生」なのだろうか。
それにしても季節はずれではなかろうか。
今ごろ、捕虫網なんか売ってるのか。
この子が昆虫ファンなのではなくて、宿題で、何か虫を取るのだろうか。
クラブの関係だろうか。
あるいは、親にいわれて買ったのだろうか。
いや、高校生の娘に捕虫網を買って来いという親はいないだろう。
やっぱり学校関連か。
しかし、この冬に。
虫を取るのではないのかもしれない。
真冬の学校帰りに捕虫網を買って電車に乗ってる女子高生。
ナゾである。
その捕虫網はどうするのかと聞きたかった。
非常に聞きたかった。
私がおばあさんなら聞いたと思う。
こういうときは、おばあさんでないのが残念である。