若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

石川九揚『書く:言葉・文字・書』

石川九揚さんの名前は新聞でよく見るし本屋でもよく見る。
書道についてたくさん本を書いてる人だな〜と思っていた。

年末に、石川さんが書いた『近代書史』という本が朝日新聞主催の「大佛次郎賞」を受賞したことを知った。
偉い人だったのだ。

賞の審査委員の感想を読むとただの偉さではないようであった。
絶賛であった。
『近代書史』を読みたくなったが、1万8千円。

う〜む・・・。
まず他の本を読んで感激してからにしよう。
本屋になんかあるはずだ。
中公新書『書く:言葉・文字・書』があったので買った。

「緒言」を読んで心配になった。

今必要なのは、英語や理数の教育以上に書字教育だと主張している。
「本書では、『書く』ということのはどういうことなのか、その底知れぬ深みについて考察してみる」と書いてある。

思い込みの激しい独りよがりの人でなければいいがと思いながら読む。

第一章の書き出し。

「最近『書』が一般の関心を引き、ちょっとしたブームになっているとも言われる」

「と言われる」という言い回しは要注意だ。
サプリメントの広告で、「××には抗癌作用があると言われています」などと書いてあれば、即レッドカードです。

サントリーサプリメントの広告にはそんな表現は一切ない。
「これを買って飲め」ということしか書いてない。
これのどの成分が効果があるといわれているとか、飲むとどうなるといわれているとか、全然書いてない。
ただ「買って飲んで欲しい」と書いてあるだけだ。
さすがサントリー、信用できます。

「ブームになっているとも言われる」てなことをと書かれても信用できない。

文部科学省の調査によれば、五年前と比べて書道塾に通う生徒は30%、書道の通信教育講座の受講生は40%の増加。書道用具業界の調査でも五年前と比べて筆の出荷額は40%、墨は20%、墨汁50%、半紙は80%の増加である。半紙の増加率が高いのは、初心者が増えて書き損ないが多いためと見られる。書道ブームと言ってよいだろう」

ウソでもいいから、この程度のことは書いてくれないと信用しない。

この人は、言葉使いが派手な割りに話の進め方が雑、というタイプの人ではなかろうか。
心配なような、うれしいような、複雑な気分で読み進む。