きのう、久しぶりで、ある要介護老人施設を訪ねた。
母が、お世話になっていた施設には、十四年間、よく通いました。
母が亡くなってからは、要介護老人施設にはエンがなく、こういう施設に行くのは二年ぶりです。
私も、いよいよ来年は65歳、先々の身の振り方を考えて、今から色んな施設をこの目で確かめておこう、というのではありません。
事情があって、行ってきたんです。
その施設の入居者の方と、お話してきました。
母がいた施設で経験した、入居者の方たちとの、いい感じの会話を思い出しました。
話が、どこにどうつながるのかどこへ飛ぶのかわからない緊張感、つながろうとつながるまいと、どこへ飛んでいこうとどうでもいいという開放感。
いい感じです。
人間の会話の基本を再確認しました。
口から出まかせを右から左へ聞き流す。
これですね。
え?
人間の会話の基本じゃなくて、アンタの会話の基本?
失礼しました。
どっちでもいいけど、事実かどうかとか、どれくらい確かかとか、ほんとうはどう思ってるのかとか、そういうことが問題になるのは、人生の一局面ですね。
施設の広間で、上品そうな老婦人が、歌を歌ってました。
横にいた元肝っ玉母さんという感じの老婦人が、それを聞いて、「オンチやなあ!」
実際、オンチでした。
元肝っ玉母さんが財布を出した。
上品老婦人が、さっと手をのばして、すました顔で、「あ、財布や。お金、ちょうだい。たくさんちょうだい」
いいんじゃないでしょうか。