妹から電話。
従姉の、やす子さんが亡くなった。
突然の報せで驚いた。
74歳だったと聞いて、また驚いた。
そんなトシだったのか。
私が小学生の頃、母に連れられて、やす子さんの家に何度か行ったが、その後疎遠になって、五十年ほどは会ってない。
小学生の私から見れば、堂々たるお姉さんであった。
何歳上だとかは考えたこともなかった。
十歳上だったんですね。
堂々たるお姉さんが、なんだか問題のある人、という扱いになって、すっかり遠い人になっていた。
十年ほど前、ある相続問題を私が取りまとめることになった。
相続人の一人が、やす子さんだったので、気が重かった。
「問題のある人」がからむ相続。
他の相続人からは、何の異議もなく、順調に書類が回収できたのに、やす子さんからは、返事が来なかった。
やっぱり、問題のある人なのか。
催促の手紙を書くにも、子供時代の記憶しかない。
そういう話を混ぜて、手紙を書いた。
すぐ、やす子さんから電話があった。
話してみると、色々問題を抱えておられるようではあったが、相続に関しては、理解してもらえて、あっさり片付いた。
たぶん、私にとって、堂々たるお姉さんの記憶しかなかったのと同じで、やす子さんにとっても、私は、坊主頭の可愛い男の子だったのだろう。
可愛い男の子の言うことだから、あっさり受け入れられたのではなかろうか。
子供の時だけの付き合いで、後は疎遠というのも、いいものかもしれない。
相続がすんで、またやす子さんとの接触はなくなった。
一年ほど前、やす子さんのお兄さんから、電話があった。
「やす子が、あなたと話したいといってるんですが、電話させてもいいですか」
非常に気になったが、結局電話はなかった。
何を話したかったのだろうか。
坊主頭の可愛い男の子と、話したかったのだろうか。
それにしても、あの堂々たるお姉さんが、74歳になっていて、亡くなったというのは、いささかショックであった。