若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

額は自由に選べない

額縁を買いに行きました。

行きつけの店です。
主人と奥さんと息子でやってます。
この店こそ、常連でございますよ。

常連の割には、おやじから永らく軽く扱われてました。
「定年後に絵を始めた初心者」という扱いでした。

それが、一躍「画家」待遇になった。
「室内用大型イーゼル」と「アトリエ用キャビネット」を買ったからです。
わかりやすいおやじです。

「初心者」扱いでも、額選びにはうるさかったですよ。

「金の額をください」
「はい、ありがとうございます」

というようなあっさりした買い方はできないんです。

「金の額をください」
「・・・風景でっか?人物でっか?」
「人物です」
「どんな感じの絵でっか?」
「いや、まあ、ふつうの・・・」
「絵を見せてもらわんことにはねえ」
若い女性の上半身で・・・」
「いやあ、やっぱり現物を見せてもらわんと」

こうこだわるからには、手作りの高級額を取り揃えているのだろうと思うのが素人のあさはかさ。

おかみさんいわく。
「まあ、二万、三万てな高い額もありますよ。ウチは、そんなええ額置いてまへんけど」

安さにもこだわるし、絵と合うかどうかにもこだわる。
商人の鏡ですな。

最近は、息子が応対することが多いんですが、この息子がおやじに輪をかけたこだわり方です。

はがき大の絵を入れるような額は店頭にたくさんあるんですが、少し大きいと取り寄せになる。
これも簡単に取り寄せてくれない。
必ず家まで何点か見本を持ってくる。

うちの玄関に座り込んで、実に熱心に選んでくれます。

「じゃあ、この金にするワ」
「いや、これもいいんですけど、これ、赤金です。絵の感じから言うと、金は金でも、こっちの青金の方が・・」
「じゃあ、それにしようか」
「ただ、服の色に合わせるとなると、茶系ですかねえ」
「じゃあ、茶系」
「しかし、バックの色に合わせるとなると、この黒檀系が・・」
「じゃあ黒檀」
「う〜ん、黒檀ではきついかなあ。黒は黒でも、こっちの鉄錆系がいいようにも思いますし・・・やっぱり金かなあ・・・」

額選びも大変なんです。

で、今回は事前にうちにある、白、黒、金の額に入れて確認しました。
家内も私も、白がいいという結論でした。

そして念のため、絵も持って行きました。

息子に絵を見せて、うちで合わせてみた結果白がいいと思うと言ったら、案の定、「う〜〜〜ん・・・」と首をひねるんです。

「白と言うと、先日お届けした白ですよね。この絵でしたら、あれではちょっとあっさりしすぎかと・・」
「金や黒より、白が合うと思ったんやけど・・」
「ええ、金や黒よりは白だと思います。思いますが、ああいう単純な白よりはですね、こういう白の方が・・・」

と言いながら在庫の山をかき分けて小さな額を出してくれました。

なるほど!
いい感じです。
純白じゃなくて、落ち着いた白で、おまけに、薄い茶色で白樺みたいな模様が入ってます。
一目見て気に入りました。

「あ!これいいね!」
「いいでしょ!」
「いい!この白がいいね」
「白でもいろいろありますのでね」
「ほんとや。この白の方が落ち着いてていい!それと、この模様がいいわ」
「これ、きいてるでしょ。この薄い茶色が、絵のバックの茶色と響きあって、いい感じだと思いますね。絵を見せていただいたとき、ぱっとこの額がひらめいたんです」
「さすがプロやねえ。やっぱりいろいろ考えんといかんね」
「そうなんですよ。絵の何に合わせるのか難しいんです。顔の色、服の色、バックの色、いろんな要素がありますんで」
「ほんとやねえ。うん!これがいい!これに決めた!」
「あの〜・・・ただですね、この額、この絵のサイズは作ってないんです」

ないんかい!

で、けっきょく、いつものように、熟慮検討というか紆余曲折というか堂々巡りというか、青金、赤金、茶系、黒系などをめぐりめぐって、青金に決定いたしました。