若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

肖像画モデル

肖像画を描き始めて数年です。

なかなかモデルになってくれる人はいません。
家内の知り合いは何人か描かせてもらいました。

私の知り合いは一人もウンと言ってくれなかった。
去年の暮れ、高校時代の美術部の後輩Tくんが、やっとモデルになってくれました。

会う度に頼むので、根負けしたのか、気の毒になったのか、まあ、それが人情というもんでしょう。

きのうは、古い友人のMくんと飲みました。
私が知ってる中で一番気楽に生きてる人です。

陶芸作家というんですが、陶芸作家となると、汗まみれになって土をこねたり火吹き竹で火をおこしたりというイメージですが、土の匂いも火の熱さも感じません。
「シャボン玉作家」という雰囲気です。

「シャボン玉を吹いて暮らしてます」
「うらやましい!」

「世界人類がMくんのように気楽に生きていけますように」

そんな感じ。

彼にもモデルを頼んでました。
これまで薄笑いを浮かべるだけで、良い返事がなかった。

良い返事はないんだけど、年賀状には、「今年こそ肖像画お願いします」と書いてくるんです。
で、「お!その気になってくれたのか」と声をかけると、言を左右にしてうやむやになる。

その気がないのだと思ってると、また年賀状に「今年こそ肖像画お願いします」と書いてくる。
やっとその気になってくれたかと、喜んで声をかけると、言を左右にして、の繰り返しです。

心にもないことをお愛想で言ってるだけなのかと分かってしまえば気楽なもんです。

が、今年の年賀状にも、「今年こそ肖像画お願いします」と書いてあった。
Tくんの例もあることだし、Mくんだって、まったく誠意のない男というわけでもあるまい。
ついにその気になってくれたのかと、メールを入れました。

すぐ電話がかかってきました。
声を聞いたとたん、ピンときました。
言を左右にする時の声なんです。

肖像画なんですけどねえ、今ちょっと忙しくて」
「え!キ、キミが忙しい!?!?どういうこと?」
「いや、4月に大事な個展があるもんで、制作に追われてちょっと時間がないんです」

ふ〜ん。
大事な個展?
何十年、彼の個展は何度も見に行ってます。
「これが大事な個展」というような話は聞いいたことがありません。

「大事な個展って?」
「ボクの将来を左右するかもしれないんです」
「キミに将来なんかあるんか」
「むっつり」

一瞬黙り込んだMくんの次の言葉を聞いて私は受話器を取り落としそうになりました。

明るい声で、「土曜日、飲みに行きません?」

絶句!

アンタの肖像画に付き合ってる暇なんかないけど、飲みに行くのなら一年365日春夏秋冬24時間大事な個展の前でもあとでもいつでもOK!

これほど踏みつけにされたのは初めてですが、そこは生来酒好き、じゃなかった、お人好しの私、いそいそと出かけて楽しく飲んでまいりました。ヽ(*´∀`)ノ