ひと月以上前に注文した額がまだ来ないので電話しました。
いつも、一週間ほどで来るんです。
二十年来利用してるこの店は、愛想はないけど信頼できます。
ホント、愛想はない。
店に行って、オヤジや息子がいても、あいさつもなければにこりともしない。
何しに来た?という顔で私をじろりと見るだけです。
で、額の話になると、実に熱心になります。
恐れ多くも、レンブラントやベラスケスまで引き合いに出して考えてくれる。
一円でも安い額を売るのが使命だと信じています。
愛想はないけど、いい額屋さんです。
それが一ヶ月以上ほったらかし。
電話に出たおやじが、「ちょっとばたばたしてまして」と言うので、なんのことかと思ってたんですが、すぐに息子がやってきました。
「すんませんすんません」と大恐縮しながら、「実は、ボク、3週間ほど休んでたんです」
いったい何があったのかと思ったら、18年飼ってた犬が死んだのだそうです。
最後を看取ってやるため店を休んでたんです。
「元気にしてた時はほったらかしにしてたんで、こんな気持ちになるとは思いませんでした。車に乗ってて犬を連れた人を見ると・・・」と涙ぐんでました。
持ってきた3種類の額を並べて、「これが1万円、これは1万500円です」
私が、最後の額を指して、「これがいいね」と言ったら、例によって顔をしかめて、「ウ〜ン・・」とうなるんです。
「いいんです、たしかにいいんですが、問題はですね・・・お値段がですね・・・こいつはちょっとですね・・・は、は、半端じゃないんです!」
いつもの展開です。
笑いたくなるのをこらえて、「いくら?」
「こ、これはですね・・い、い、い、1万2千円なんです!」
それにしました。