若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

お嬢さんを憎む

駆け込み乗車は危険ですからやめてください、という放送はよく聞きます。

きのう、近鉄電車に乗りました。
乗って、ドアの前でホームに向かって立ってたら、若い女性が危険覚悟の駆け込み乗車をする勢いで走ってきた。

「ふつうの社会人」という感じの若い女性であった。
お嬢さんという感じであった。

もう一息の所でドアが閉まりかけた。

「お嬢さん、残念でした」と私は思った。

お嬢さんはそうは思わなかった。
あきらめなかった。

閉まるドアに向かって、お嬢さんは落ち着き払って右足をさっと突っ込んだのだ。

信じられん!

閉まる電車のドアに向かって右足をさっと突っ込むとどうなるか。

右足がはさまれちゃうであろう。
で、はさまれちゃいました。

右足をはさまれちゃったお嬢さんは、「きゃ〜!いや〜ん!恥ずかし〜!」という表情を見せると思った。

しかし、右足をはさまれちゃったお嬢さんは、意外にも、「きゃ〜!いや〜ん!恥ずかし〜!」という表情を見せなかった。

落ち着き払って、車掌を見た。
右足をはさまれたまま、落ち着き払って、いや、挑発的に車掌の方を見たと私は思った。

お嬢さんは、「車掌よ、お前がはさんだ私の右足をどーする?」という表情であった。

「はさまれた者の勝ちだ!車掌よ、お前はもう死んでいる!」という表情であった。

お嬢さんと車掌のしばしのにらみ合いのあと、プッシュ〜〜〜!とドアが開いた。

お嬢さんは、何事もなかったかのように、というか、勝ち誇ったように、というか、はさまれていた右足から威風堂々と電車に乗り込んだ。
そして、電車は何事もなかったかのように動き出した。

「ただいま、お嬢さんがドアに右足を突っ込んだため発車が遅れ、申し訳ございません」という車内放送もなかった。

私は、年甲斐もなく、このお嬢さんを憎いと思った。

かつて、これほど憎いお嬢さんを見たことがない。