今日は美術予備校。
初期ルネサンスの巨匠、ベッリーニの「ベネチア総督レオナルド・ロレダンの像」を模写してます。
先週は、顔の陰の部分で3時間。
今日は、顔の明るい部分で3時間。
私の隣では、同年配の男性Aさんが石膏デッサン。
Aさんは、完全素人です。
定年で仕事をやめてから、絵を始めようと思った。
基礎からやろうという無益なじゃなかった無謀なでもなかった、え〜っと、殊勝な心がけで石膏デッサンに挑戦してます。
今回の石膏はアリエス像。
今日で12日目。
3時間を12回でっせ。
うつむき加減の微笑の美しい女神像なんですが、難しいんです。
私も描きましたが、難しい。
Aさんは、ぶつぶつ言いながら描いてました。
不本意のようである。
思い通りにいかんようである。
納得できないようである。
そうでしょうな。
アリエスの像を見て、Aさんの描いたデッサンを見たら、これは不本意であろうなと、同情せざるを得ない。
しかし、先生はそんな気楽なことは言っておれない。
「うん、まあ、いいじゃないですか。いちおう、今回で完成ということにしましょう」
「・・・う〜ん・・・ちょっとこの頭のあたりが・・・」
「いや、よくここまで持って来られたと思いますよ」
「・・・う〜ん・・・それと、目の表情なんですが・・・」
「まあ、きりがないですからね。私なんかでも、何度描いても納得と言うことはないですよ。ま、今回はこれで・・・」
強引にというか、理性的にというか現実的にというか、打ち切り!
私なんか、「不本意」は承知の上なんで気楽なもんです。
帰りの電車。
私が降りる学園前駅に近づくと、横に立ってた青年がそわそわし始めた。
なんとなく、挙動不審。
危険性はないと思えるが、挙動不審。
どうも、早く降りたいようである。
焦ってるようである。
トイレに行きたいのか、バスの時間が間に合わないのか。
と思ってたら、学園前駅に到着。
ドアが開くと、脱兎のごとく駆けだした。
あれ?
トイレの方にも行かず、階段の方にも行かない。
電車を降りて、正面に突進。
正面には、近鉄がやってるケーブルテレビ。
青年は、その大相撲の画面に突進したのであった。
大相撲中継の画面を食い入るように見つめてました。
よほどの相撲ファンか、知り合いが力士なのか。
聞きたかったけど聞けませんでした。