アメリカの歴史学者ジェリー・スタンレーさんが書いた『カウボーイとロングホーン』という本を読みました。
映画に出てくるかっこいいカウボーイじゃなくて現実のカウボーイを紹介する本です。
映画を見ただけでも大変な仕事だと思ってましたが、無茶苦茶です。
運ぶ牛の数はだいたい3千頭。
それを20人ほどのカウボーイ(一人はコック)で追っていく。
距離は、テキサス州の牧場からカンサス州の鉄道駅まで約2千キロ。
日本の本州がだいたい1500キロ前後という計算だから、私なんかの想像を絶する、気が遠くなるような距離です。
私にはカウボーイはつとまらない。
アメリカ人にもつとまらなくて、1回でやめる人がほとんどだったようです。
給料は隊長だけはまともで、コックはまあまあ、あとは超低賃金で、おまけに仕事はきつくて汚くて命がけというんですからいいとこなしです。
牧場主が元締めだと思ってたんですが、アメリカ、ヨーロッパの「出資者」がいて
ぼろもうけだった。
隊長の月給がは百数十ドルに対し、1回当たりの利益は十万ドルほどだったそうで、もうちょっと給料出していい。
えげつないです。
どれだけきつい仕事かというと、馬を百頭ほど連れて行くんですが。旅が終わったときはぼろぼろになってて捨てられた。
馬も人も使い捨て。
旅の途中いろいろ危険はあるけれど、最悪なのが牛の集団暴走で「スタンピード」という。
何の前触れもなく突然暴走する。
雷とか蜂とかバッファローのにおいとかに驚いて一瞬で3千頭の大暴走がおきる。
カウボーイの死亡率は3%ほどだそうですが、大暴走で死ぬのが一番多かった。
次に危険なのが川で、映画の題名にもなった「赤い河」が洪水が多くて多くの死者が出た。
牛はカンサス州の駅から汽車でシカゴに送られて、食肉加工工場で処理されるんですが、その工場の労働者がまた悲惨なものだったそうです。
悲惨なカウボーイと悲惨な食肉労働者のおかげで牛肉食がアメリカとヨーロッパに広まった。
う~ん、魚はどうか、野菜はどうかと思うと気楽に食べてられないではないか。
『カウボーイとロングホーン』を読んで「食」について考えさせられるとは思いませんでした。
カウボーイの格言が紹介してあります。
「大きな馬は観賞用、乗るなら小型」(牛を追うには小回りが利く方がよかった)
「スカンクとコックとだけはけんかするな」。これはわかりやすい。
カウボーイが歌った歌も紹介してある。
「♪隊長さんよさようなら。いろいろお世話になりました。
おいらは鞍を売り払い、百姓仕事に励みます。
つらい牛追い仕事とは、きれいさっぱりおさらばだ」
ベテランカウボーイというのは他に能のない男と書いてあってしみじみします。