アマゾンキンドル無料本シリーズを読み続けてます。
「無料」の魅力に勝てないというのもありますがキンドルの字が大きいのも魅力です。
私が持ってる「キンドルオアシス」の画面の大きさは文庫本くらいです。
手元にある新潮文庫を見たら、一ページ38文字✖16行です。
キンドルの私の設定は一ページ28文字✖10行です。
非常に見やすいです。抵抗なく読める。
九鬼周造の随筆を読みました。
ウイキペディアによれば九鬼周造は京大教授で、日本の精神や美意識について研究した人で、『いきの構造』で知られている。
知ってるけど読んでません。
さて、キンドル無料本ですが、まず『外来語所感』というのを読みました。
九鬼さんがあるところで「こよみを見せてほしい」と言ったら「運勢でも調べるのですか」「曜日を調べるのならカレンダーでしょう」と言われてあっけにとられた。
昭和11年の話です。
それより前の昭和4年、九鬼さんが9年間のヨーロッパ留学を終えて帰ってきたら、街中至る所に英語の看板があるので、まるで植民地だ、シンガポールかコロンボみたいだと思った。
九鬼さんは怒ってます。
新聞の広告に堂々と「サタデーサーヴィス」「雛人形セット」「このチャンスを逃さず・・」などと書いてあるのを見るとなんだか人をばかにしているような気がして腹立たしいほど嫌悪感を感じた。
「いったい誰に向かって広告をしているのだ。お互いに日本人ではないかといいたくなる」
「日本語を欧米の侵入に対して防御することを私は現代の日本人の課題の一つと考えたい。満州に軍隊を送るばかりが国防ではない」
文部省に任せておくわけにはいかないと言ってます。
なかなか激しいです。
『いきの構造』を書いた割にいきな人ではなさそうです。
続いて『小唄のレコード』を読みました。
戦前の話ですが、作家の林芙美子と京大のドイツ文学教授成瀬無極が九鬼さんの家に来た。
林芙美子が小唄が好きだというので小唄のレコードをかけた。
林芙美子は「小唄を聞いているとなんにもどうでもかまわないという気になってしまう」と言った。
九鬼さんも成瀬さんも心の底から共鳴して三人の目から涙がにじみ出た。
「私は端唄や小唄を聞くと全人格を根底から震撼するとでもいうような迫力を感じることが多い」と書いてます。
最後に「どうせこの世は水の流れか空ゆく雲か・・・」というたぶん小唄の一節が書いてありました。
これで全人格が根底から震撼ですか。
外来語をむやみに使うのもよくないけど、大げさな言葉をむやみに使うのも考え物だと思いました。