公民館分館長をしていた時に知り合った女性Mさんは当時87歳、「カクシャク」を絵にかいたような方でした。
「カクシャク」の字は書けなくても絵には描けるのかというようなややこしい話はやめましょう。
分館の事務室で二人で話をしているときMさんがにっこり笑って「病める時も健やかなるときも、世話をするのは女です」と言ったのが印象に残ってます。
ご主人をかなり以前に見送ってお一人暮らしのMさんの実感でしょうな。
ここ数年、家内の具合が悪く病院に行く機会が多い。
高齢者を見る機会が多い。
高齢夫婦を見る機会も多い。
男はダメだ!と思うことが多い。
二、三日前整形外科で、診察を終えて駐車場へ向かう高齢夫婦。
ご主人はさっさと車のほうに歩いていく。
奥さんは駐車場へのスロープを両手で手すりにつかまりながら一歩一歩カニの横歩きみたいに降りていく。
車の横で待つご主人は奥さんの方を見もしないで突っ立っている。
なんじゃこの男は。
今日は私が風邪かなと思ってかかりつけのM医院へ行きました。
駐車場に止まった車から男性が降りてきた。
続いて女性が降りた。
私よりいくつか上の夫婦ですね。
男はさっさと入り口に歩いていく。
小柄な腰の曲がった奥さんは杖を突いて歩くのが大変そうである。
男は後ろも見ずにドアを開けて入って行って、ドアは閉まった。
なんじゃこの男は。
追いついた私は奥さんのためにドアを開けた。
奥さんは「ありがとうございます」と会釈した。
男は受付でさっさと診察券を出してさっさと待合室のソファにすわった。
名前を呼ばれて男が奥さんを残して診察室に入って行った。
奥さんが見てもらうのかと思ったけどご主人だったようである。
ということは、奥さんが認知症か何かで家に置いておけないのであろうか。
それで態度がつっけんどんなのであろうか。
いろいろ想像していたら看護婦さんが奥さんを呼びに来た。
「奥さん、先生からお薬の説明がありますのでお願いします」
なんじゃそれは。
奥さんをほったらかしてさっさと自分だけ動くこの男は奥さんに薬の説明を聞いてもらわなければならんような男なのか。
どいつもこいつも。
苦々しく待ってたらMさんが入って来た。
今年93歳になるそうです。
「相変わらずお元気そうで」と声をかけてから、病院でのあいさつとしてはやや不適切かなと思いました。