デパートに靴を買いに行きました。
紳士靴売り場に行くと50代と思える男性店員が接客中でした。
売り場をうろつきながら聞いてたんですが、こういう人をカリスマ店員というんだろうと思いました。
「わたくし、紳士靴のプロです!」という気合と「お客様は神様です!」という気合が激しく核融合反応を起こして飛び散ってた。
売り場にはもう一人若い女性店員がぼ~っと立ってた。
私が売り場をうろついてても知らん顔である。
「わたくし、紳士靴のことはな~んにも知りませんので声をかけないでください」という顔である。
カリスマ店員がいつになっても「接客中」なのでしかたなくその女性に声をかけたら迷惑そうであった。
紳士靴にも関心ないし売ることにも関心なさそうであった。
困ったもんだと思ってたらカリスマ店員の「接客」が終わった。
こっちに来てくれるかと思ったら来なかった。
知らん顔を装ってる感じであった。
これは新人店員を鍛えるというか育てるというか、彼のポリシーなのかもしれない。
ポリシーはいいけどこっちはいつまでも女性店員相手にのれんに腕押しごっこをしてるわけにはいかん。
女性店員にきっぱり見切りをつけたという勢いでカリスマ店員に声をかけた。
するとにこやかに、「お客様が先ほどお手に取っておられたこれでございますが・・・」と言ったので接客中も私の方を見てたんだと感心した。
そして別の靴を持ってくると、靴のことならわたくしにおまかせください!という感じで話し出した。
「いちどはいてください。足に吸い付く感じなんです!」
はきました。
「吸い付く感じでしょう!」と念を押されて「吸い付きます」と答えざるを得なかった。
「歩いてください。歩きやすいんですよ!」と言われて2メートルほど歩いた。
「歩きやすいでしょう!」と念を押されて「歩きやすいです!」と答えざるを得なかった。
もう一度すわってメーカーの説明とかいろいろ聞いた。
「もう一度歩いてください。さっき歩かれただけでうんと足になじんでます」
で、歩いたら「さっきとぜんぜんちがうでしょう!」と念を押されて「ぜんぜんちがいます」と答えざるを得なかった。
で、その足に吸い付くような歩きやすい靴を買うことにしました。
クレジットカードを渡したらにっこり笑って、「この靴をお求めになったお客様は、すぐにまたもう一足お求めになります」と言った。
魔法にかけようとしてるんだなと思った。
カードを持ってむこうに行って何かしてるんだけど一向に戻ってこない。
エンエンと待たされた。
やっと来たと思ったら、「申し訳ございません。機械の調子が悪く、わたくしの・・・実績が・・・反映されておりませんで・・・」とわけのわからんことを言って売り場を出て行った。
またもエンエンと待たされてやっと戻ってきたら「申し訳ございません。機械の調子が・・・」ということでカリスマ店員の顔は消え失せタダの機械音痴のおじさんになり果てて魔法が消えたのは幸いであった。