いろんなヘンな人がいる、というのは当たり前である。
仕事では、いろんなヘンな人がいるとは思いませんでした。
えげつない人はたくさんいた。
当たり前である。
ヘンでもなんでもない。
ヤマハでエレキギターを習ってる時、いろんなヘンな人がいるなあと思いましたし、私もそう思われてたでしょう。
趣味の世界で、えげつない人はないんじゃないか。
カルチャーセンター人物画教室のAさんもヘンな人であった。
去年やめましたが、70代半ばと思える温厚な紳士です。
この人が、パレットに絵の具全色を約1センチずつならべるのを見たとき、ヘンな人だなあと思いました。
『油絵入門』みたいな本にはどれも、絵の具はやたら出さないこと、5色か6色でよろしいと書いてある。
それを、Aさんは、全十数色ならべる。
ヘンである。
温厚な先生は注意しないんだなあと思ってたら、ある日ついに先生が注意しました。
「絵の具は、こんなにたくさん出すもんやおません。5色か6色でええんです」
先生にそう言われて、恐縮したように、「ハイ!ハイ!」とかしこまってた温厚な紳士であるAさんが、次の週もまた次の週もそのまた次の週も、相変わらずパレットに全十数色ならべるのを見て私は不思議に思いました。
しばらくして温厚な先生がまた、「絵の具はね・・・」と注意して、温厚なAさんが「ハイ!ハイ!」とかしこまって承ったにもかかわらず、次の週もまた次の週も、全十数色をパレットにならべるのを見たとき、しみじみしたのであった。
さて、今日は乗馬でした。
サッカーのコートみたいな長方形の馬場で乗るんですが、馬は長方形に沿っては歩きません。
ほっておくと楕円形に歩きます。
それが自然ですね。
わざわざ直進して直角に曲がるなんて不自然です。
その不自然なことをさせようというのが人間のヘンなとこです。
不自然だから、馬は言うことを聞きません。
まっすぐ進まない。
上級者はまっすぐ進ませますが、私なんかはうまくいかない。
今日は、前日の雨で、四隅に水溜りが出来てた。
で、レッスンが始まる前に、指導員が、「今日は馬場の状態が良くないので、隅にいかなくていいです」と言いました。
レッスンが始まって、ポコポコ歩いてたら、私の前の女性が、馬を無理やり隅の水たまりの方に直進させようとした。
指導員がそれに気づいて、「○○さ〜ん!今日は、そこ、行かなくていいんですよ」とやさしく声をかけた。
女性は会釈をした。
次の隅に来たとき、女性はまた無理やり馬を水溜りに向かって直進させようとした。
で、指導員が、「○○さ〜ん!今日は足場が悪いから、行かなくっていいですって!」と声をかけた。
女性はまた会釈をした。
次の隅に来たとき、女性はまた、無理やり馬を水溜りに向かって進めようとした。
指導員がたまりかねたように、「○○さん!今日は水溜りがあるから、そこ行かなくっていいって言ってるでしょう!」と声をかけた。
女性はまた会釈をした。
次の隅で女性がまた馬を直進させようとしたとき、指導員は、「今日はいいって言ってるでしょう!ああ、俺ってかわいそう!」
ほんと、かわいそう。
休み時間、乗馬歴20年というベテラン女性Hさんと話をしてたら、見知らぬ女性がHさんに声をかけた。
ケネディ大使が皇居を訪問した時の馬車行列の話でした。
テレビで見たそうです。
「あれでは馬が可愛そうですよね。馬は見事な白馬だったけど、あんな乗り方をされたらね。乗馬をしてると、乗り方が気になりますよね。もうちょっと乗る人を選んで欲しいですね」
ふ〜ん、ああいう行列で馬に乗るのは、宮内庁か警視庁の専門家ではなかろうか、と首をかしげました。
その人が立ち去る後ろ姿を見ながら、Hさんが冷たく言いました。
「あの方、ビギナーさんなんですよ」
いろんな人がいるもんです。