ルーズソックスをヒットさせた会社が倒産したそうである。
ルーズソックスを初めて見た日のことは鮮明に覚えている。
朝の駅までの道は、通勤、通学の人で顔ぶれは大体決まっている。
駅までの中間辺りで、横の道から出てきて私の前を歩くのは、某女子高の制服を着たA子さんであった。まじめで、おとなしそうな子であった。
ある朝、前を歩くA子さんのソックスの異変に気づいた。
少したるんでいた。
ほんの少しだけれど、年頃の女の子だから、気にしているだろうなと思った。
かわいそうに。
出かける時には一騒動あったに違いない。
「も〜!こんなたるんだのしかないの!?」
「洗濯、まだ乾けへんのよ」
「かっこ悪い!学校休む!」
「なに言うてるの!それくらいええやないの。誰もあんたのソックスなんか気にしてないよ」
「んも〜!」
きっとA子さんは、ぶーっとふくれて家を出たのであろう。
次の朝、前を歩くA子さんのソックスを見て私は驚いた。
同じソックス!
いったいこれはどういうことか?同じソックスを二日はき続けるとは?
次の朝、私は心から不思議に思った。また同じたるんだソックスをはいている。
この子の家庭はどうなっているのか?
母親がいなくて、この子が小さな弟や妹の世話をしていて、自分のことなど構っていられないのであろうか?
女子高生のソックスが、少したるんでいようがいまいが、どうでも良いと言われるかもしれないが、私はそういうことが気になるのである。
次の日もA子さんのソックスはたるんでいた。
その日の夕食の時、私は、ナゾの女子高生の不思議なソックスについて話した。
すると、当時中学生と小学生だった娘たちが声を合わせて言った。
「なに言うてるの!それ、はやってるんやで!」
「は、はやってる??どういうこと?」
「高校生の人たち、皆はいてるよ。ルーズソックスて言うんやで」