若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

肩車

朝の電車。

若い女性三人の会話。
新米の保母さんか、大学生が教育実習で幼稚園に行っているのか。

「クラスどう?」
「けんかばっかり!ずーっと誰かがけんかしてるわ。イス振り回したり、かばん振り回したり」
「私、肩車が恐い。『肩車して!』って言う子、多いねん。恐いわー。肩車なんかしたことないもん」
「私も!」
「私はある。弟よく肩車したわ」
「肩車って、どうやるん?後ろにひっくり返ったらどうしようかと思うわ。どこ持ったらええの?」
「手」
「あ、手か。私、足持ってた」

私は、小学校の6年生の頃、近所の一年生の「たかおちゃん」をよく肩車してやった。
たかおちゃんは、頭の大きな、かわいい男の子だった。
そのころ、たかおちゃんのお母さんが、勤めに出るようになった。それで、私の母が、たかおちゃんが学校から帰ってくるとき、家にいてやってほしいと頼まれたのである。
母は、たかおちゃんが帰ってくると、おやつの用意をして戻ってきた。たかおちゃんは、一人でおとなしくおりこうに留守番していそうな子であった。

よく覚えていないが、時々私が遊んでやっていたのだと思う。
たかおちゃんの家の前の道で、相撲をとったりした。
たかおちゃんは、肩車が好きだったが、一番好きだったのは、「ぐるぐるまわし」だった。
これは、私が、たかおちゃんを肩にかついで、ぐるぐる回る。
何度も回ってから、たかおちゃんを地面に下ろすと、目の回ったたかおちゃんが、ふらふらしてしりもちをつくという遊びであった。

とにかく好きでしたね。
ニコニコ笑いながら、両手をあげて、「もういっぺんしてー」と寄って来る姿が目に浮かびます。

母は、「たかおちゃんは、汽車が好きやねー」と言っていた。

その後、たかおちゃんは引っ越して行った。

十年以上後に、母から、たかおちゃんが東大に入ったことを聞いたときはびっくりしたが、東大を出て、国鉄に入ったことを聞いたときは、「汽車が好きやったからなー」と思った。

私の脳に言いたい。
四十数年間、たかおちゃんの笑顔を保存していてくれて感謝します。