若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

蝿をとる

古来、「蝿や蚊」と並び称されていた両者であるが、蚊に比べて蝿は少なくなったと思う。

子供の頃は、蝿をとるのが楽しみみたいになっていた。
「蝿たたき」でたたき殺すのである。
きたない。

蝿とり紙をぶら下げたこともある。
これもきたない。
蝿とり紙自体が汚らしい上に、そこに蝿がくっつくのであるから、なお汚らしい。
それが天井から何本かぶら下がっていた。

「噴霧器」という近代的兵器もあった。
水鉄砲のようなものであった。
今みたいに微細な霧状のものが出るのではなく、殺虫液が飛び散るのである。
アース製薬の広告の、笠木シズ子さんがにっこり笑って、「あーすっとした!」というのが、印象的であった。

小学三年生の時、友達の家で見た蝿とり器は、優雅なガラス製であった。
フラスコの首の非常に長いものである。1メートル近くあったと思う。
下の球状の部分に酢が入っていた。

それで天井に止まった蝿をとろうというのである。
蝿の真下から、そーっとフラスコの首を近づけて、すっと天井にくっつける。
密閉されて行き場を失った蝿が酢に落ちる。

道具としては、実にエレガントで洗練された美しいものであった。
とり方としては、呼吸、間合いなど、古典芸能にも通じるものがあった。

この道具は、このときしか見ていない。
普及しなかったものと思える。
高価だったのであろう。
長さ1メートル近いガラス製品というのは、繊細すぎたのであろう。

皇族の家とか、高級料亭とかで使われたのではないか。

蝿が減ると、「五月蝿い」という文字使いも実感できなくなる。

昔読んだアメリカの「ひねくれ辞典」に
楽天家:室内をブンブン飛び回ってる蝿を見て、『出口を探してるんだな』と思う人」
というのがあった。

同じ辞典で
「オペラ:ナイフで背中を刺された男が、倒れる代わりに大声で歌いだす劇」