ヤマハのM嬢から電話。
何かと思ったら、以前話があった、ヤマハ・ポピュラーミュジックスクール生徒募集の説明会での演奏の件であった。
おじさんバンドで、前の発表会でやった「恋の片道切符」を演奏するという話である。
いつもは講師演奏を聞いてもらうのだが、入学希望者にとっては、生徒の演奏を聞く方が参考になるだろうということでこういう案になったらしい。
ヤマハ音楽振興財団は、ヤマハ・ポピュラーミュージックスクール全国12万人の生徒の頂点に立つ者として私に白羽の矢を立て、生徒数拡大の切り札として、説明会での模範演奏を依頼してきたのであった。
その後、何の話もないので、取りやめになったと思っていたが、内部的にいろいろ検討していたようだ。
説明会で、私たちの演奏が始まった途端、集まった人たちが帰ってしまったらどうするのかという意見が出たらしい。
そこで、講師演奏も準備して、私たちの演奏で説明会の客が帰りそうになったら、講師演奏ということにするらしい。
電話でMさんは、「映画の『タイタニック』の中の曲をサックス科の生徒が演奏するので、ギターを弾いて下さい」と言った。
本番は16日である。
私が一曲覚えるのにニケ月かかる。
Mさんは、バックで弾くだけだから大丈夫ですよ、と言う。
だいじょうぶかな〜、と思いながら引き受けた。
で、とにかくその曲のCDを借りて聞いてみようと思ったら、電話で聞いた曲名をもう忘れてしまった。
仕方ないので、夏にやった「恋の片道切符」のほうを練習しようと思ったら、こっちもほとんど忘れている。
私は一曲覚えるのに二ヶ月、忘れるのに三日である。
だから、十年もギターを習っているのに、レパートリーといえるものがない。
本番が終わるとすぐ忘れてしまう。
尊師も言っておられた。
「中年からはじめた人は、本番が終わると、脳がリセットされるようですね」
私の脳に聞きたい。
しょうもないことは覚えているのに、なぜ肝心なことを忘れてしまうのだ。