若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「鷹は昼狩をしない」を読む

作者はスコット・オデール。
図書館の児童書室で借りた本である。

タイトルがカッコよくて意味ありげなのに、出典などの説明が全くないのが不満。

私は、図書館でデタラメに本を借りることがある。
全く興味のない分野の本とか、知らない著者の本などを借りる。
たまに面白いものに当たるとうれしい。

子供向けの本も時々借りる。
私は、児童書を多く読んでいるわけではないが、欧米の児童書はなめてはいかんと思う。
私が読んだ欧米の児童書には、いかにも「子供向けです」というものがなかった。
子供向けだからこそ全力投球、直球一本勝負!という力の入ったものが多かった。
これもその一冊。

この本は、16世紀に聖書を初めて英訳したイギリスの牧師ウイリアム・チンダルの生涯を描いている。
プロテスタントカトリック教会や国王などの支配に対して戦いを挑みはじめた時代で、当時聖書を各国語に訳すことは禁じられており、命がけの作業であった。

農夫や職工達にも聖書を読んでもらいたいと願うチンダルは、イギリス国王の手を逃れてヨーロッパに渡り、各地を転々としながら英訳聖書を印刷する。

チンダルに共感して力を貸すのが主人公、冒険的商人、黒真珠号の若き船長トム・バートンである。

チンダルは、英訳聖書の刊行半ばで、密告により捕らえられ、ブリュッセル郊外で絞首火刑という極刑に処せられる。
チンダルを密告した男は、トムが倉庫に隠したチンダルの英訳聖書の原稿を、倉庫に火を放って焼いてしまう。

本の終わり近くで密告者を捕らえたトムが追求する。

「どうして倉庫を燃やしたんだ」
「チンダルの異端の原稿をみんな灰にしてしまうためだ」
「チンダルさんが命をかけて書き残した言葉を、燃やすことなんかできるもんか。あんたのつけた火は、空を明るくしたが、ただそれだけなんだ」

本を読んでいると、たまに、「ああ、著者はこの一言を言いたかったんだな」と思うことがある。
スコット・オデールは、このトムの言葉を子供達に聞かせたかったのではないかと思った。
この一言を思いついて、それを最後にトムに言わせるためにこの物語を作ったのではなかろうか。