新聞の広告。
「ストレスリムーバー:パルスエッグ」
楕円形の、手の平に納まるくらいの物である。
スイッチを入れて15分で、敵意、嫉妬、不安などから来るストレスから解放されると言う。
「一台二役」と書いてある。
「A(アクティブ)モード」と「R(リラックス)モード」があるのだ。
Aモードでは、精神が高揚するし、Rモードはリラックスさせてくれる。
上手に使い分けている人の例が出ている。
出勤前にAモードで15分、寝る前にRモードで15分使用して快適に暮しているそうだ。
不思議なことに、この絶大な効果が何によるのか全く説明がない。
「聖地」もなければ、「マイナスイオン」も「遠赤外線」もない。
面白くない。
テレビで、「絶叫マシン」というのをとりあげていた。
子供を連れて、「あやめ池遊園地」に行った時のこと。
小学一年生だった長女と、水上ジェットコースターに乗った。
その頃、「あやめ池遊園地」には「宙返りジェットコースター」が登場して、従来の「水上ジェットコースター」は「絶叫マシン」としての座を奪われてはいたが、お子様向けの乗り物としては人気を維持していた。
ワクワクしている娘と乗り込む。
後ろの座席には、オバハンが二人座ったと普通の人は書くだろうが、私は書かない。中年の女性が二人座った、と書く。
この中年女性を一目見たら、誰もが、「オバハン」と言うとは思うが、私は言わない。
紳士だもん。
ジェットコースターというものは、「ガタン」と動き出すものである。
で、ガタンと動き出した途端、後ろの座席のオバハンじゃなかった中年女性たちが、「キャーッ!」と絶叫した。
娘が思わず後ろを見た。
ガタンと動き出すと、次はゴトンであるが、ゴトンときたとき、後ろのオバハンじゃなかった中年女性が、またも「キャーッ!」と絶叫した。
ガタゴトと坂を上っていくのにあわせて、オバハンじゃなかった中年女性が、キャーキャー絶叫する。
カタツムリのようなスピードなのである。
娘はずっとオバハンじゃなかった中年女性を見ている。
さて、いよいよ池に向って下降!
もー、なんちゅうか、絶叫どころではない。
オバハンが発する衝撃波によって水面が波立つ。
ジェットコースターが上昇しようが下降しようが金切り声を上げて叫びつづけている。
あまりのことに、私は娘を連れて途中で降りたのであった。